2025/11/29に、東京都台東区にお住みの男性のお客様からDRC コルトン シャルルマーニュ 2020年 白を630,000円でお買取をさせて頂きました。

この度は、当店・上野店へDRCコルトンをお持ち込みいただき、誠にありがとうございます。上野といえば東京の中でも文化の厚みと人の温かさが共存する街であり、美術館・博物館・公園といった文化施設の豊かさが際立っています。一方で、昔ながらの商店街や飲食店の賑わいも健在で、“格式と人情が肩を並べる街”という独特の魅力がある地域です。そんな上野の空気感は、単に洗練されているだけでなく、長い時間をかけて育まれた懐の深さを持っています。

今回お持ち込みいただいたDRCコルトンは、その上野が持つ文化的な厚みと静かな品格に驚くほど自然に寄り添う一本でした。カウンターにそっと置かれた瞬間、店内の空気はふっと落ち着き、まるで上野公園の大きな木々が風に揺れたときの静かな余韻が流れ込んだような感覚が広がりました。DRCコルトンは、華やかさよりも“大地の深みと時間の積層”を感じさせるワインであり、近づくほどにその奥行きが静かに立ち上がってくる性質があります。その佇まいは、文化と人情が地層のように積み重なった上野という街と非常に親和性が高いと感じました。

お客様は、「長年の節目に、自分にとって恥ずかしくない一本を選びたかった」とお話しくださいました。その言葉には、見栄ではなく“自分に真面目でいたい”という上野らしい価値観が自然と滲んでいました。上野の方々は、派手なアピールではなく、自分の軸で“本当に良いもの”を選ぶ気質があります。DRCコルトンのように、表面の華やかさではなく深奥に潜む美しさを持つワインは、その価値観と見事に一致します。

ボトルの状態を拝見すると、ラベルは紙質の張りがしっかりしており、にじみや角の浮き、波立ちといった劣化は一切ありませんでした。発色も自然で、光の影響をほとんど受けていない理想的な状態です。DRCのラベルは非常にデリケートなため、ここまできれいな状態で保たれていること自体が高評価につながります。湿度や温度に細心の注意を払ってこられたことが、外観からひしひしと伝わってきました。

キャップシールはしっとりとした均一な艶を持ち、乾燥や縮み、ひび割れ、歪みといった経年変化は全くありませんでした。指で軽く触れた際のなめらかな質感は、長期間にわたり安定した温湿度環境で大切に管理されていた証です。ガラスの透明度も非常に高く、光に透かすと深い紅が静かに揺れ、その奥に熟成の確かな時間が積み重なっていることが視覚的にも確認できました。

査定中、お客様は「特別な日に開けようと思っていたんですが、どうしても“今日ではない”と感じてしまって」と柔らかく笑っておられました。その感性は、上野で長く暮らす方に多い、“時を焦らない成熟した価値観”そのものです。DRCコルトンが持つ“時間が育てる美しさ”という哲学と見事に融合していると感じました。

DRCコルトンは、ロマネ・コンティのような“圧倒的な霊性”とは別の軸で、人を深く魅了するワインです。黒系果実、湿った大地、鉄分のニュアンス、樽由来の奥行き、そして時間とともに静かに立ち上がる複雑な香り──それらが幾層にも重なり、一本のワインの中に“ゆっくりと流れる深い時間”を感じさせます。味わいは重厚でありながらも透明感を失わず、余韻は驚くほど長く続きます。まるで上野公園の池に映る夕景が、時間の経過とともにゆっくりと変化していくように、飲み手の心に静かに染み込む一本です。

液面は理想的な高さを保ち、沈殿物は自然で均一。透明度の高さからも熟成が健全に進んでいたことが読み取れ、“誠実に積み重ねられた時間”が一本に凝縮されていることがはっきりと見て取れました。