メーカーに所属せずに活動する独立時計師とは?

メーカーに所属せずに活動する独立時計師とは?

高級時計といえば誰もが知るようなビッグブランドをイメージしてしまいがちですが、実はメーカーに所属せずに個人で活動している時計職人がいます。独立時計師と呼ばれる彼らの活動や哲学を紹介したいと思います。

2017.10.24

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独立時計師とは?


独立時計師とはメーカーに所属せずに活動してる時計師たちのことです。本来であればメーカーの技術部にいて時計造りや開発だけに専念しているであろう彼らが独立をして、個人でブランドを立ち上げて時計造りだけでなくブランディングや経営まで行っているのです。

メーカーに居てやりたいことよりも売れそうなものを選ばなくてはならない場面でも、個人であればしっかり自分の意思で造りたいものを造れるのです。そういった情熱が安定した生活や立場を凌駕しているのが独立時計師です。

独立時計師の組織”AHCI”とは


独立時計師"AHCI"とは1985年に設立された独立時計師たちの国際的な組織です。規模は小さく入会のハードルは非常に高く、高い技術や実績がないと入会は困難です。バーゼルワールドにも出展しており、毎年独立時計師ならではの作品を見ることができます。

著名なメンバーにはスヴェン・アンデルセンやフィリップ・デュフォー、フランソワ・ポール・ジュルヌがいます。過去にはフランク・ミュラーも在籍していました。日本人では菊野昌宏氏、浅岡肇氏が会員になっています。

メーカーに所属しない理由


独立時計師がメーカーに所属しないのはメーカーに居ると自分がやりたいことができないからです。

例えば独立時計師として有名なフィリップ・デュフォー氏は元々ビッグブランドで働いていました。技術のコールセンターで働くうちにある時計の設計に問題点を見つけたとき、上司に報告しましたが全く改善されませんでした。大きな会社は一人の改善提案だけでは動けないのを知り、製造・販売などすべてを自分で決めることにしたそうです。彼が独立時計師になるのを決めるのはこの経験からでした。

独立時計師ならではの作品がある


独立時計師の作品には独特のクセがあります。メーカーの造る時計は間違いなく”売れる”ものです。なので点数で言うならば150点の時計よりも80点の時計を多く造ろうとするのです。

しかし独立時計師の造る時計には強い意志が込められています。それは売れることもそうですが自分のつくりたいものへの強い意志です。結果、売れる尖りのない時計よりも自分の表現を大事にする時計師が多くなり、クセが強い時計が生まれるのです。そのクセを愉しめる人は独立時計師の深みにどっぷりとハマっていきます。

フィリップ・デュフォー氏

フィリップ・デュフォー氏は独立時計師の中でも超有名な存在です。彼の造る『シンプリシティー』は製作を終えた今でも欲しいという声が絶えません。

『シンプリシティー』はその名の通り、シンプルな時計です。スイス伝統のデザインでギョーシェが彫られている3針の時計です。しかし凄まじいのは製作のケース、針、ネジ、文字盤すべてを自分でつくることです。磨き、ネジの製造の細かな部分まで自分でつくる時計師は世界広しといえど5人もいません。

ダニエル・ロート氏


ダニエル・ロート氏はブレゲの再来とまで言われた時計師です。ブランドとしてのブレゲを復活させたのは彼の手腕によるものです。その技術が評価されムーブメントメーカーのレマニアを経てブランド「ダニエル・ロート」を立ち上げました。

しかし経営をするのは苦手だったらしく、ブランドはブルガリに買収されました。その後妻と息子と家族だけでブランド「ジャン・ダニエル・ニコラ」を立ち上げました。現在では1年に1本のペースで時計を造るまさに独立時計師らしい生活をしています。

浅岡肇氏

浅岡肇氏は数少ない日本の独立時計師です。彼は1992年に独立しデザイン事務所を設立。腕時計などのデザインを行ううちに製作を自分で行うようになりました。時計学校に行かずに自己流を極めていくことで時計を造れるようになった非常に珍しい例です。

彼もまた時計部品のすべてを自分で造る拘りをもった時計師です。ボールベアリングまで自分で造るのですから驚きです。彼の造る時計は年間で10本程度と非常に少なく貴重です。

まとめ


独立時計師の時計は非常に希少でクセがあるまさしく”作品”です。彼らが大事にするのは売れるかどうかよりも自分の意志が貫けるかどうかです。

クセがある彼らの時計はときには70点をつけたくなるものもありますが、150点をつけざるをえない素晴らしいものまでバラバラです。ですがそのクセを愉しむことができるなら、他の時計メーカーでは絶対に見ることのできない世界でたった一本の作品に巡り合うことができるでしょう。

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