どうやって複雑機構が生まれた?

時計の本来の機能は時刻を知ることです。しかし例えば身近なところでは鳩時計や、1時間置きに鳴る時計も元々はすべて歯車だけで機械式で動かしていたのですから驚きです。

そもそも時計の文化が大きく発展したフランスでは時計は時刻を知るものではなく、贅沢の象徴でした。どれだけ複雑で特別な時計を持っているかが貴族たちにとってのステータスだったのです。

貴族たちを満足させるために生まれた複雑機構たちは、現代の技術でもとても再現が難しい完成度なのです。

トゥールビヨン

複雑機構といえばまず思いつくのがトゥールビヨンです。またの名を台風と言われるトゥールビヨンは、時計を動かしているてんぷ自身を針と平行に動かすことで重力の影響を軽減するものです。

元々ポケットに入れるため縦の姿勢が多い懐中時計に対してつくられた機構です。現在では機能性もさることながら、その複雑さからブランドの商品群のトップにいます。

そして「私たちはトゥールビヨンの開発ができる技術力、資本、そして野心がある」とアピールしているのです。

永久カレンダー

次に挙げるのが永久カレンダー、あるいはパーペチュアルカレンダーです。

よくある日付表示の行き着く果てが永久カレンダーで、ぜんまいが動いている限り日付の修正がまったく必要ありません。通常の日付機能では、30日と31日までの月の区別ができないので、毎月修正します。

次にアニュアルカレンダーという機能がありますが、これはうるう年以外は修正が必要ありません。つまり4年置きでいいのです。

しかし永久カレンダーはそれさえ必要ありません。4年置きにしか動かない歯車がある非常に複雑な機構といえるでしょう。

スプリットセコンドクロノグラフ

スプリットセコンドクロノグラフ、あるいはラトラパンテはクロノグラフの進化系です。通常は1つの時間軸に対してしか測ることができませんが、スプリットセコンドクロノグラフは違います。

例えると通常のクロノグラフは50m走、スプリットセコンドクロノグラフはリレーを測ることができます。ラップタイムが測れるため、レースなどの周回するものを測るときには重宝します。

非常に複雑なので、高価で種類が少ないのは他の複雑機構と同様です。

ミニッツリピーター

ミニッツリピーターは時刻を音で知らせる機能です。時計の中にハンマーがあり中の板を叩くことによって音を鳴らしますが、空気を振動させる非常に綺麗な音が特徴です。

同じ種類のアワーリピーターは時まで、クオーターリピーターは時と15分刻み、ミニッツリピーターは時・分まで知ることができます。

基本的には針で表示している時刻と同期しているので、時刻を知るためと言うよりは貴族が贅沢のために時計を見ずに時刻を知るためなどの逸話があります。

オートマタ

オートマタ=自動人形です。いわゆる鳩時計が動いたりするものを言います。

機械式時計の技術はオートマタがルーツになっているので、歯車仕掛けの技術が盛んなスイスやドイツで時計の技術がいち早く発展していった経緯もあります。

現代では蝶々がはばたく姿や、王子様とお姫様が手を取る姿を時刻と共に動かす時計がつくられています。時刻を知るというよりも美術工芸品のような側面があり、便利さよりも楽しさで見るものでしょう。

まとめ

世界中の複雑機構たちを紹介しました。もちろんこれですべてではなく、もっと複雑な機構も数多くあります。特に日本には独立時計師菊野氏が開発した和時計がありますので、複雑時計を見たい方はまず菊野氏の作品を見るのがいいでしょう。

元貴族の持ち物なだけあって現代でも非常に高価なものばかりですが、いつか手に取ってかつての貴族の思いに馳せるのも楽しめそうです。

大き目の時計イベントにはトゥールビヨンが置いてあることは多いので、ぜひ足を運んでみてください。