良い時計とは?どんな時計が”良い”のか

まず良い時計とは何か?については二つの考え方が大事だ。「永く使える時計であること」と「値段に見合う手間がかけられていること」だ。超有名ブランドの時計でも、100万円以上の時計でもない。とても哲学的だが、意外にこの2つを満たしている時計は少ない。

それぞれについての具体的な見方は後述するが、専門的な知識は必要ない。大事なのは有名じゃないブランドのさほど値段の張らない時計の良い部分を感じられるかどうか、先入観を乗り越えられるかどうかだ。

永く使える時計であること

まず大前提として、時計は道具であると同時にファッションアイテムでもあるということ。現在では特にファッションアイテムとして考えている人の割合が多いだろう。

もう少し具体的に言うと、道具として永く使えるものであることと、ファッションアイテムとしてトレンドや時代に影響されにくいことと両方が必要になる。

一見相反かのように見えるが、実は両立は可能だ。いわゆるロングセラーと言われるような時計(具体的には例えばセイコー5など)は時代や年齢を越えて愛されているし、時刻が読み取りやすくしっかりした造りの時計だ。

永く使える”デザイン”

永く使える時計のデザインはトレンド、流行に流されない。ブランドは問わないし最新のものである必要もない。

具体的にはクロノグラフに見られるような左右対称の小窓(インダイヤル)や、セクターダイヤルに見られるような多くのブランドが発表してきたデザインを指している。なぜならこれらのデザインは100年近く前から存在するデザインだからである。年齢も国も越えるユニバーサルデザインと言っていい。

誰にでも使える例えばフォークのようなデザイン工学と考えると意外に身近で奥深いものに感じられるだろうか。

永く使える”機械のつくり”

ここでは専門的に解説するつもりはないが、当然機械のつくりにも永く使うことを想定している素晴らしいものも存在する。しかしながら良い物をしっかり選べる時計師の力量と哲学も必要とされる。

オーストリア発ドレスデンで活躍中の独立時計師「Habring2」は自己開発を除けば使用するムーブメントは2種類しかない。本当に信頼しているムーブメントしか使わない、そう決めているそうだ。機械の頑丈さや組みやすさで選んでいるが、そこには彼なりの時計を永く使ってもらうための哲学がある。

値段に見合う”手間がかけられていること”

今販売されている時計、特に高級時計についての値段設定について深く考えた事はあるだろうか?決して原価のことを解き明かそうとしているのではない。同じくらいの手間がかかっているであろう時計の値段がブランドによってまるで違うことが往々にしてあることが問題だと言っているのだ。

その理由はいわゆるブランド料と呼ばれる市場価格、要するに高くしても売れるから高くするといった考え方だ。そのビジネスモデル自体を否定するつもりはないが、ものづくりとして時計を考えた時にとてもさみしい気持ちにならないだろうか?

値段に見合う”デザイン”

デザインに手間がかかるほど時計は高くなるのは仕方ない。しかしデザインに手間がかかっているということ自体がイメージが湧きにくいかもしれない。しかししっかり見ればデザインへの手間は奥が深い。

例えば1時、2時といった位置に立体的な棒や浮き立った文字を見た事はないだろうか?あるいは七宝焼きと呼ばれるガラスの釉薬を流し込んでつくる、いわゆるエナメルを文字盤に流し数字や文字を印字するものは?あるいは時計のふちにダイヤモンドがセットされているものは?いずれも高い技術を持った職人の手仕事によるものである。

値段に見合う”機械のつくり”

組み込まれているムーブメントが時計の値段に見合うかどうかは簡単に判断できる。理由は世界的に使用されているムーブメント(ETA)があるからだ。PCで言うWindowsのように普及しているので、ほとんどの時計がETA製のムーブメントを使っていると言っていい。

それだけに同じムーブメントを使っているにも関わらずデザインや他の機構で違いがないのに値段が著しく違うとすれば、それは物づくりではなくブランド料で高いのかもしれない。

まとめ

専門的な知識を使わないで良い時計を見極める考え方を紹介した。もちろん個人の価値観があるので悪い時計があると言っているわけではない、みんな良い時計だ。

ただ中には一時の流行で使われなくなってしまうデザインの時計や、手間や哲学以上に市場に合わせた値段設定をするブランドも存在する。そんな時に時計ツウの見方を少しでも思い出して、しっかり物を見て選ぶことができるようにここでは解説をした。少しでも手助けになれば幸いである。