ウイスキーの製造工程を知る意味

シングルモルト、ブレンデッド…など、ウイスキーにはさまざまな種類があります。スコッチ、カナディアン、ジャパニーズ、アメリカンなど細分化していくとキリがありません。

しかし、基本的なウイスキーの製造工程は殆ど一緒です。そのため、この工程のなかのどこかの違いにより、味わいや種類が細分化されていくわけです。ウイスキーの種類をむやみやたらに覚えるのではなく、しっかりと基礎を知ることで、よりさまざまなウイスキーを知ることができるのです。

ウイスキーの製造工程とは?

まず、細かな部分を説明していく前に、ざっくりとウイスキーの製造工程を紹介します。ウイスキーは、一般的に大麦を原料として利用します。そして、その大麦を乾燥させて粉砕という作業が行われます。

その後、糖化という工程にうつり、酒母が加えられてアルコール発酵が行われます。アルコール発酵は発酵タンクと呼ばれる専用のステンレスタンク内で行われます。最後に、蒸留工程を経て樽のなかに入れられて熟成させられていきます。これが、一般的なウイスキーの製造工程です。

麦芽から糖類をつくる

ウイスキーの原料は麦芽ですが、要するに麦芽を醸造したものはビールとなります。工程などは違いますが、ある意味ではビールの蒸留酒がウイスキーであると考えても良いでしょう。

元々麦芽には水分があり、それが乾燥させられることで麦芽という状態になります。麦芽が乾燥した状態になったら破砕し、水を加えると徐々に大麦内にあったでんぷん質が糖化酵素によって、糖類へと変化します。要するに、デンプルは糖類の固まりであり、あたためることでデンプルが酵素のハサミで切られ、細かく糖類になる工程を経ます。

発酵の工程

麦芽から糖類を手に入れたら、次は発酵の工程に入ります。原料の大麦由来の糖分であるからこそ、あのウイスキーの香ばしい香りなどが得られます。ブドウ糖などを添加するものとは味わいが違うため、これだけはメーカーも手を抜けません。

発酵には、酒母と呼ばれるものが使用されます。これは、アルコール発酵を促す酵母が入ったもろみのようなもので、この酵母たちは糖分を食べて炭酸ガスとエタノールを生成させます。発酵初期はぶくぶくと細かな泡立ちがありますが、酵母が糖分を食べ尽くす頃には穏やかな泡へと変化します。

蒸留の工程

実は、アルコール発酵の状態ですでにお酒は完成しています。しかし、この状態ではアルコール度数は僅か数パーセントしかなく、ウイスキーと呼べるものとはほど遠い状態であるといえます。

そこで、アルコールの揮発性分を利用する蒸留という工程でウイスキーの原酒づくりがおこなわれます。シングルモルトウイスキー、グレーンウイスキーといったような種類によって、単式蒸留、連続式蒸留といったものが使用され、さらには蒸留回数も変わってきます。多く蒸留すれば、多くのアルコールがとれる反面、味わいはサッパリとした感じとなります。

蒸留の仕組み

蒸留の仕組みとしては、アルコールは約80度で沸騰するため、水よりも沸点が低いというポイントを利用して、蒸気を発生させます。この蒸気はアルコールですので、一気に冷却を行い、液体化させることでウイスキーの原酒が手に入れられるわけです。

雑味などは一切なく、香気成分とアルコール、さまざまな揮発成分を手に入れることができるのです。さらに、先述したようにさまざまなモルト原酒をつくるために、蒸留工程に違いをつけて、いろいろな味わいの原酒をつくっていくところもウイスキーの面白さです。

貯蔵から熟成へ

蒸留し終わったばかりの原酒は、ニューポットという名前で扱われています。各メーカー、このニューポットを樽の中へと投入してから数年熟成させます。

実は、ウイスキーのあの風味や色合いというのは、樽から抽出された成分であり、ニューポットの状態のウイスキーは荒々しく、無色透明でかなり飲みにくいものとなっています。つまり、樽熟成を経たこと、時間がウイスキーに魂を吹き込んでくれるのを待つという部分が、ウイスキーをロマンティックなお酒にしているのです。

ブレンド

多くの場合、ウイスキーはブレンダーの手によってブレンドされ、ひとつの商品として発売されます。一種類の原酒だけつくられるシングルモルトウイスキーは、非常に優れた原酒であることからも、全体量の1割にも満たないといわれています。

とはいえ、多くのブレンデッドウイスキーのレベルが低いわけではなく、熟練のブレンダーの実力を楽しめるウイスキー好きにはたまらない逸品です。恐ろしい数の原酒をひとつひとつブレンダーがチェックし続け、ブレンドし、メーカー代表の一本として我々の目の前へと到着するのです。

ウイスキー工場へ行ってみよう

今回、ウイスキーの醸造工程をざっくりと説明しましたが、やはり国内にもウイスキー工場があるので、実際に訪れてみるのも良いでしょう。

蒸留を行う機器をスティルポットといいますが、非常に大きくその姿は壮観です。また、樽熟成は特別な部屋などで行われており、部屋中が樽で埋め尽くされてるという風景も普段なかなか見ることができないでしょう。ぜひ、ウイスキーの製造工程から知って、いつも楽しまれている味わいにアクセントをつけてみてはいかがでしょうか。