ワイン世界は「同調」と「第3の味」

ワインの場合、おいしい法則の第1は「同調」。

同じような香りや味を持つ料理とワインは、同じ香りや味わいが相乗効果をもたらし、美しいハーモニーを奏でてくれます。これが人間が本能的に、味覚がおいしいと反応するポイントなのです。

たとえば塩と胡椒がきいた霜降りサーロインやフィレステーキの場合、スパイシーな胡椒のニュアンスを兼ね備えた南仏の赤ワインがとても合いますし、またブラウン系のソースであれば、赤ワイン、ホワイト系のソースなら白ワインとかね。

白身魚には白ワインという定説もありますが、一概にそうではなく、もしソースが赤ワインソースであれば、これに同調する赤ワインが良いですよね。

第2の法則は、上にも書いたように、まったく違う味わいのもの同士が合わさることにより、別の新しい風味、「第3の味」が生まれることをさす、いわゆるマリアージュ。

極甘口の貴腐ワインにフォワグラのテリーヌ、ぴりりと刺激のあるブルーチーズに、極甘口のポートワイン。

先ほどの同調と比べると、かなり難易度があがるマリアージュですが、この域まで行くと「私ってすっごいグルメかもっ」て感じがしますね。

日本酒におけるマリアージュの理念

実のところ、この二つの感覚、残念ながら日本酒世界にはありません、というより、そもそも日本料理の概念にないのです。

第1の日本酒の概念は、まず「料理がおいしくなる組み合わせ」であること。要は「料理の邪魔をしない酒」ということがとても大事になってくるのです。

酒は水のように癖がなく、料理の臭み、油っぽさ、後味を洗い流してくれる酒がいいという考えが主流のため、日本酒の吟醸酒のようにとことんまで雑味を消した、水のように口あたりがよいお酒が好まれます。

個性と個性がぶつかり合う革命的なフランスと、波風を立てることなく静を良しとする日本との文化の違いがこんなところにも出ているような気がします。

第2には「お酒がおいしくなる組み合わせ」。たとえば、塩辛、沖漬け、酒盗、からすみ、塩ウニなど旨味と塩分がぎゅっと凝縮した珍味類を少しつづつまみながら飲む酒はもう極上の味わいで、酒がぐっと美味しくなりますよね。日本酒好きならたまらない飲み方です。

こう考えると、この酒とこの料理というフランス式マリアージュというのは、日本酒世界には存在しないといえるでしょう。

しかし日本酒も所詮はワイン同様醸造酒!「同調」や「第3の味」をちゃんと体験できるのです。

ワインのマリアージュのいろはを知らなくても、意外にカンタンに。この楽しみ方&おいしい法則を知っていれば、家飲みでもより深く日本酒を楽しめますよ。

「同調」を体験できる組み合わせとは?

ポイント1》大吟醸酒や吟醸酒の場合

フルーティーで華やかな香りと、自然な甘みを持つ大吟醸酒や吟醸酒には、やはりフルーティーな料理が「同調」します。

白身魚のお刺身、フレッシュトマトのサラダ、グレープフルーツソースを使った甘エビのカルパッチョなど、フルーツや華やかな香りも持つ野菜などと一緒の料理がよいでしょう。

またシンプルにフルーティに同調させた、バナナやりんご、苺、メロンなど、フルーツそのものともとてもよく合いますよ。

ポイント2》生酒や本醸造酒の場合

生酒や本醸造酒など、すっきりあっさりとした軽いタイプの場合は、同じく個性の強くない素材が「同調」します。

たとえば、お豆腐、湯葉、山菜、大根、海藻、酢の物、そばなどがぴったりだと思います。

お刺身なら、イカや蛸、貝類などもよいし、グリーンサラダやオリーブを使ったサラダ類も、生酒や本醸造酒のハーブのような風味や軽快さが同調するでしょう。

ポイント3》生もとや山廃、純米酒の場合

生もとや山廃、純米酒など、コクと飲み応えあるタイプなら、しっかり濃厚なものが「同調」しますね。

旨味のある赤身や光物などのお刺身、脂の乗った魚の焼き物、煮物、グラタンやピザなどチーズを使った料理、鶏肉、豚肉、牛肉などしっかりした味付けのものと合わせると格別ですね。

日本酒で「第3の味のマリアージュ」を

先に説明したとおり、本来日本酒とは雑味を消した、水のようなお酒が主流なので、いざ日本酒でマリアージュとなるとなかなか難しいですね。

マリアージュとは個性と個性のぶつかり合いから出来る、第3の味ですから。と、「なにかないかなぁ~」と過去に飲んだことがある日本酒の記憶を辿ってみると…そう、日本酒の「古酒」なんかは、ワインを思わせる個性の強いお酒になっていますね。

日本酒ならばこの「古酒」で、マリアージュを表現できるでしょう。

たとえば「古酒」と「豆腐の味噌漬け」、まるでソーテルヌ(貴腐ワイン)とフォワグラのテリーヌのようななんともいえない不思議で、新しい風味が口中で生まれます。

また「甘口古酒」と「ブルーチーズ」も良いですね。青カビがたっぷり詰まった「ゴルゴンゾラ・ピカンテ」やクリーミーで品のある「スティルトン」などとは極上のマリアージュを体験できる逸品でしょう。

意外なところでは「純米酒」もワインに近いマリアージュを期待できます。

純米酒はお米をあまり削らず、常温で発酵させているので吟醸酒のサラリとした水のようなお酒ではなく、米の雑味を残したどっしりとしたコクのあるお酒に仕上がっています。

この「純米酒」と「和スイーツ」はりっぱなマリアージュとなり、餡子ものや栗きんとん、羊羹にあんみつと、ねっとり濃厚に甘いものとは、驚きのマリアージュになるでしょう。

まとめ

何と何を合わせればよりおいしくなるのか、お酒と料理なにをもって相性がいいというのか、理解して頂けるよう頂けるよう、様々なマリアージュを紹介してみましたが、いかがでしたか?

日本酒と料理のマリアージュの法則は、テーマも壮大でとても奥が深い事案ですが、日本酒を嗜まれる際は一度これらを意識してみてくださいね。

きっと今までとは違う、新しい世界が目の前に広がるでしょう!