アードベッグ蒸留所の歴史

アードベッグ蒸留所は1815年、創業者ジョン・マクドーガルによってアイラ島の南岸、大西洋の荒波が打ち寄せる小さな岬に建てられました。

アードベッグとはゲール語で「小さな岬」や「小さな丘」を意味する言葉で、蒸留所の場所から名付けられまさはた。

しかし20世紀に入る頃にはオーナーチェンジが何度も行われ、とうとう1980年から89年までは完全に生産が止まってしまいます。

その時のオーナーは、アライドディスティラーズ社だったのですが、生産中止に追い込まれつつも頑張って生産を再開させますが、その数年後には操業停止に追い込まれてしまいます。

現在こそ安定した生産に落ち着いていますが、この状態になったのは最近で、1997年にグレンモーレンジ社が買収してからの事。

当時はひどく朽ち果てていた蒸留所も、グレンモーレンジ社によって大改修が行われ、今では美しい建物としてよみがえっています。

アードベッグのロゴ

ボトルや箱によく描かれているアードベッグのロゴですが、アルファベットのAを囲む鎖は蒸留所の東の教会跡に立っている、ケルト十字キルダルトンクロスの紋様がモチーフにされています。

その鎖が絡み合う様は、アードベッグ永遠の象徴として描かれ、アードベッグがこの先もずっと門戸を開いていられるようにと言う真摯な思いが込められています。

アードベッグの個性の源

アードベッグの個性的な味わいは、スコッチシングルモルトウイスキーの中でも特に際立っていますが、その個性の源には幾つかの要因があります。

個性その1:ピート

ピートを強く炊き込んだ麦芽を使用して、原酒を仕込む蒸留所が多いアイラ島ですが、その中でもアードベッグは最強と言われています。アイラ島蒸留所のピートレベルを表す指標として使われるフェノール値は以下の通り。

アードベッグ》約55ppm
ラフロイグ》約50ppm
ラガブーリン》約40ppm
カリラ》35ppm
ボウモア》約20ppm
ブナハーブン》約5ppm
ブルイックラディ》約5ppm

アードベッグのフェノール値は他のウイスキーと比べてもズバ抜けていることがわかりますね。

個性その2:発酵槽

オレゴン松製のウォッシュバックを使用することで、アードベッグ特有のロウのようなフレーバーとテクスチャーが作り出されます。

個性その3:ポットスチル

ランタンベッド型の再留釜にピューリファイア(精留器)が設置され、これによってあの独特なアードベッグの個性が表現されているのです。

個性その4:仕込み水

ウーガダール湖の水を使用しています。ゲール語で暗く神秘的な場所という意味の湖をもつこの湖の水は、ピートの地層を通ってくるため黒っぽい色をしています。

世界中がお祝いをするアードベッグ・デー


(画像出典:(C)fotolia.com)
アイラ島では毎年5月最終週に、ウィスキーと音楽の祭典、「アイラ・ウィスキー・フェスティバル(Islay Festival/Feis Ile)」が開催され、期間中日替わりで各蒸留所の「オープン・デー」が開催されます。

このイベントは一週間続き、最終日を飾るのがアードベッグなのですが、2012年よりアイラ・ウィスキー・フェスティバルの最終日は「アードベッグ・デー」として定められ、アイラ島に集結するアードベッグ・ファンだけではなく、世界中のアードベッグファンと一緒にお祝いする日としています。

そして毎年アードベッグ・デーには新作が発表されるのが恒例になっていますが、2016年の新作は、1815年アードベッグが誕生して間もない時代、密造や密輸が全盛だった頃のアイラ島の暗黒時代をテーマにした「アードベッグ ダーク・コーヴ」がお披露目されました。

ちなみに2015年は200周年のパーペチューム、その前はオールヴェルデがリリースされており、これらは希少性も高く入手困難なウイスキーとなっています。

アードベッグは近年、ボトラーズからのリリースも減少してしまいました。

しかしアードベッグの代表といえる10年物のウイスキー「TEN」を含めた、素晴らしい定番商品のラインナップと、アードベッグ・デーに合わせてリリースされる限定品のクオリティーの高さは、アードベッグファンを飽きさせず常に魅了し続けています。

まとめ

幾度となく閉鎖されては不死鳥のような復活を遂げたアードベッグ蒸留所。アードベッグ蒸留所を支えた裏には、オーナーの努力はもちろんですが、ファンの支えなくしてはありえない復活劇だったことは間違いありません。

アードベッグのロゴにある想いのように、もう二度と門戸を閉めなくても良いよう、ファンとして支えて行きたいですね!