はじめに

チリやオーストラリア、アルゼンチンなど、比較的新しいワイン産地はニューワールドと呼ばれています。一方、フランスやイタリア、スペインなど、紀元前よりワイン造りを行っているようなヨーロッパのワイン産地はオールドワールドと呼ばれます。

ニューワールドでは、カベルネソーヴィニヨン、シャルドネ、ピノノワール、ソーヴィニヨンブランなどを使用した高品質でお買い得な国際品種のワインを造っているイメージがあるかもしれません。

これだけ、ニューワールドのレベルが上がってきているのにも関わらず、未だにオールドワールドが人気を博している。この理由は一体何なのでしょうか。

まず、ひとつに国それぞれの『個性』があるか無いか…という部分です。似通ったワインではなく、国によって主要品種や法律など、さまざまなものが違います。オールドワールドといってひとことで括ってしまうのは、あまりにも乱暴なのです。

今回、そのオールドワールドのなかの特殊中の特殊と言われる格付を持つ『ドイツ』を紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。

ドイツワインは甘口が高級!?

ワインサーチエンジン(WineSearcher.com)などをはじめとした、世界で最も高価なワインを発表しているワインサイトが人気です。

毎年、オークションなどが行われる時期になると、各サイトが高額ワインのランキングをニュースとして取り上げ、それをワインライターやブロガーがニュースとして拡散します。

当然ながら、常連なのはロマネコンティやアンリジャイエ、モンラッシェなどの、ブルゴーニュグランクリュなのですが、実は白ワインという括りでいくと最も高額なのはドイツワインなのです。

たとえば、数年前ではありますが、「エゴン・ミュラー=シャルツホーフ リースリング トロッケンベーレンアウスレーゼ」という長い名前の甘口ワインは、世界で3番目に高額なワインとして紹介されました。その価格は、1本当時の日本円で65万円ほど。

まさか、ドイツのワインにこんなにも高額なものが存在しているとは、想像もしなかったという方もいるかもしれません。

実は、ドイツは甘口ワイン大国であり、甘口ワインをとても重宝する国だったのです。その理由は簡単で、非常に寒冷な気候であるが故、完全にブドウを熟すことが困難であったという過去があるからです。

後述しますが、北緯52度という場所にザーレウンストレートという産地がありますが、スペインのマラガやイタリアのシチリア島、アルゼンチンのメンドーサとは、まったく別世界の気候条件といっても良いほどです。

それだけ、寒い地域でワイン造りが行われいてるため、甘く糖度の高いブドウが重宝されてきたのです。

白ワインが多い理由

近年、アメリカなどで甘口の赤ワインが多くなっているようですが、基本的に白ワインが甘口ワインとなります。

ドイツでは、アールという産地が特殊な気候条件に恵まれているために赤ワインを造りますが、ほとんどの地域が白ワインを造っています。冷涼な地域では、黒ブドウに色がつかず、糖度も上がりません。そのため、白ワインが以前は多く造られていたのです。

ただ、近年では温暖化の影響で赤ワインも多く造られており、シュペートブルグンダー(ピノノワール種)から特に、繊細でエレガントな高品質ワインを生み出しています。

また、アメリカを輸入対象としていた時期に甘口ワインが多く輸出され、日本にもドイツの甘口ワインが多く輸入されることとなります。

このことから、ドイツには甘口ワインしか無いと思われていましたが、今では辛口ワイン6割、甘口ワイン4割と辛口ワインの方が多く造られているようです。

特殊な格付が存在する

さて、ここから早速本題へ入っていきましょう。日本はまだまだ遅れているようですが、ワイン造りで有名な国には必ずといって良いほどにワイン法が存在します。

フランスのAOC、イタリアのDOC、オーストラリアのGI、南アフリカのGU、アメリカにもAVAがあるなど、高品質ワインの製造を国を挙げて応援しています。

もちろん、諸諸問題もありますが、ワイン法が無い無法地帯の日本のワインがなかなか世界へ戦いを挑めない理由は、この部分にもあるようです。

さて、話しをドイツにも戻しましょう。ドイツには、特殊な格付があります。もしかしたら、世界で最も難しい格付ではないか?といわれています。

それが、エクスレ度というブドウを収穫した時の糖度でランク付けを行うものです。

QbAという制度があり、これがまた数分割されます。では、少し詳しく説明していきましょう。

ベライヒ

ドイツワインには、QbAという格付がありますが、まず指定された13の地域で造られるワインしか対象となります。別のところで造ったワインを混ぜたりするのでは、この肩書きを名乗ることができないので、正真正銘のドイツワインとして守られています。

その13の地域が、アール、バーデン、フランケン、ヘシッシェ・ベルクシュトラッセ、ミッテルライン、モーゼル、ナーエ、ファルツ、ラインガウ、ラインヘッセン、ザーレウンストレート、ザクセン、ヴェルテンベルクです。

一部を除き、寒冷な気候のドイツですので、ほとんどが南側の地域であることがお分かりいただけるはずです。

ちなみに、モーゼルの隣はフランスのアルザスです。そのため、アルザスではリースニングであったりゲヴェルツトラミナー、シルヴァーナーなどのドイツ品種が有名なのです。

さて、そんな13の地域で造られるワインが基本的にはクヴァリテーツヴァインと呼ばれ、AOC的に守られているワインとなります。もちろん、村名、畑名と細分化されていきますが、あまりにも細かく混乱を招くので割愛します。ポイントは、次のQBAです。

QBAの肩書き

13の地域で栽培されたブドウを収穫した時、フェルディナント・エクスレによって考案されたエクスレ度という糖度の基準値によって格付が変わってくるのが、QBAです。

まず、最低エクスレ度が51あり、アルコール度数が7%だった場合はQbAを名乗れます。ピラミッドの底辺から紹介していきますが、まずは「カビネット」。完熟した状態で普通に収穫されたものであり、エクスレ度が67~82であれば名乗れます。

次に、「シュペトレーゼ」です。こちらは、カビネットのために収穫するブドウを敢えて1週間遅く収穫する遅詰みブドウとなっています。リスクがありますが、当然その分糖度は上がります。エクスレ度は76~90となっています。

次に、より糖度が高いブドウを使った肩書きが「アウスレーゼ」です。耳馴染みのある方もいるかもしれませんが、こちらは房選りで収穫されたものです。もちろん、糖度は前述した2つよりも高く、さらには上質なものを房で選抜していきます。エクスレ度は、83~100です。

アルコール度数はここまで全てが7%です。さて、ここからぐっと品質が上がっていきます。

「ベーレンアウスレーゼ」は、より糖度が高いブドウを今度は粒選りで選抜して造られる甘口ワインです。エクスレ度も110~128と高く、非常に甘みの強いワインが仕上がります。

ここまでは、通常に糖度を上げたブドウですが、トップ2は特殊な条件も満たす必要がある肩書きです。

アイスワイン

冒頭の方で、世界3位の高額ワインとして君臨したのが、このトロッケンベーレンアウスレーゼです。

QBAの頂点に君臨する、ドイツきっての超高級ワインですが、その条件は貴腐ブドウを使うことです。

貴腐ブドウは、さまざまな自然条件が重なり、本来ブドウにとっては有害であるボトリティスシネリア菌がブドウに有益な作用を及ぼす奇跡のブドウです。ひからびたような姿は一瞬腐っているのかと思わせますが、糖度が非常に高くなり、ブドウの甘さがぐっと高まります。

エクスレ度は、150~154とずば抜けて高く、さらに貴腐ブドウは水分を殆ど含んでいないので、通常のスティルワインの数倍の量を使用する必要があります。

貴腐ブドウ自体絞り、ワインにするのも至難の技といわれており、まさにドイツという産地が生んだ奇跡のワインといっても過言ではありません。希少価値が高いのは当然であり、高額な価格となるのです。

トロッケンベーレンアウスレーゼ

冒頭の方で、世界3位の高額ワインとして君臨したのが、このトロッケンベーレンアウスレーゼです。

QBAの頂点に君臨する、ドイツきっての超高級ワインですが、その条件は貴腐ブドウを使うことです。

貴腐ブドウは、さまざまな自然条件が重なり、本来ブドウにとっては有害であるボトリティスシネリア菌がブドウに有益な作用を及ぼす奇跡のブドウです。ひからびたような姿は一瞬腐っているのかと思わせますが、糖度が非常に高くなり、ブドウの甘さがぐっと高まります。

エクスレ度は、150~154とずば抜けて高く、さらに貴腐ブドウは水分を殆ど含んでいないので、通常のスティルワインの数倍の量を使用する必要があります。

貴腐ブドウ自体絞り、ワインにするのも至難の技といわれており、まさにドイツという産地が生んだ奇跡のワインといっても過言ではありません。希少価値が高いのは当然であり、高額な価格となるのです。

VDP

ここまで、ドイツワインの格付けである、QBAについて学んできました。これは、昔から定められている法律です。

しかし、世界と戦う高品質ワインなら、辛口ワインでなければということで、新たな生産者団体の格付けもあることを覚えておきましょう。それが、VDP(ファウデーペー・ドイツ高品質ワイン醸造所連盟)というものです。

高品質な辛口ワインを生産する意識の高いドイツのワイン生産者が寄り添った団体で、徐々に参加者も増加中です。

VDPのワインなら間違いは無い、とまでいわれており、若手の生産者はこのVDPに入ることが憧れという人も多いのが実態です。

もちろん、甘口ワイン、辛口ワインの共存が好ましいのですが、ドイツのワイン事情もここ10数年で大きく変わってきていることは頭に入れておきましょう。

まとめ

ドイツワインは、ラベルも複雑で異様に難しい。こういった印象の方は多いと思います。まず、QBAであれば必ずラベルに記載されていますので、これを参考に購入してみてください。

きっと、最高峰の味わいに出会えるはずです。