はじめに

ワインの有名産地といえば、フランスやイタリア、スペイン、ドイツです。そのなかでも、価格が安く、バルクワインなどに多く使用されているワインを造るのがスペインです。

リオハなどの有名産地以外、ワインのことをあまり詳しくないという方にとっては、少し安ワインの産地というイメージがあるかもしれません。

しかし、スペインには数多くの高級ワインも揃っており、そのうちのひとつがプリオラトという場所で生まれています。このプリオラトは、以前はワイン産地としてはあまり名を馳せておらず、有名になったのはここ最近です。

プリオラトを有名ワイン産地にしたのは、4人組という男達の存在が大きく関わっています。

今回、ここではプリオラトの4人組とは一体なにか、そしてどのようなワイン産地、ワインを生産しているのかを解説します。

プリオラトとは?

プリオラトは、スペインの北東部に位置するカタルーニャ州にあるワイン産地のひとつです。ピレネー山脈の南側にあり、地中海に接する温暖な気候の産地として知られています。州都はあのバルセロナであり、華やかで国際的な一面を持つ州の一部です。

しかしながら、プリオラトはそこまで有名ではなく、カバで有名なペネデスなどが同州にあるために、ワイン生産地としては注目度が低かったといえます。

その後、優れたワインを生産するという産地として認められ、D.O.Caという特選原産地呼称ワインのなかの、より厳しい規定をクリアした産地にだけ与えられる、そんな場所として認定されています。

このカテゴリはまだまだ新しく制定されたばかりであり、1988年からスタートしたものです。1991年にはリオハがD.O.Caに制定されていますが、2009年にプリオラトが制定されました。

スペインは、全ての州でワインを生産することができる産地として知られていますが、なんとこのD.O.Caは、リオハとプリオラトしかなく、まさにスペインを代表する2大産地のひとつとして認められているのです。

プリオラトはどんなワイン産地か?

プリオラトは、タラゴナの北西に位置しており、モンサン山脈の山間部にあり、シナウラナ川が流れている場所です。

ワイン産地として理想的な昼夜の気温差や乾燥帯であり、健全で糖度の高いブドウが育てやすい産地として注目されています。スペインの他の産地と大きく違うのが、スレートと呼ばれる粘板岩が土壌のベースとなっているところです。

12世紀頃から修道院たちによってブドウ造りが開拓されており、修道長などを表すプリオラがこの産地の名の由来となっていると言い伝えられています。

糖度が高いブドウが育てやすい産地であったものの、ブドウ畑が非常に急な場所にあったことや、バルクワイン用のブドウが育てられていたこともあり、就労者が激減。結果的に、過疎地となり忘れ去られた土地となってしまっていたのです。

プリオラトの衰退

前述した通り、安価なバルクワインを製造する産地としてプリオラトはブドウ栽培の歴史を歩んでおり、さらには唯一ボトルワインを製造していたダ・ムラ社も他地域のワインをボトル詰めし政府より改善を促されるなど、ワイン産地として衰退しはじめてしまいます。

その後、大手企業のスカラ・デイ社がプリオラト産ブドウでボトルワインを製造しますが、これといって大きな話題となった訳ではなく、最盛期のカリニャン種の畑は9分の1にまで減少してしまっていたのです。

4人組の登場

プリオラトは、土壌も特殊であり、さらには昼夜の気温差が大きく、乾燥していることなどから、良いブドウができる条件は整っていました。そんな時、このプリオラトに目をつけた人物たちがいました。

1980年代の初頭、ルネ・バルビエ社のルネ・バルビエ、パラシオス・レモンド社のアルバロ・パラシオス、カルラス・パストラナ、ジュゼップ・リュイス・ペレスなどがこの地域の可能性に注目し始めます。

外部の投資家達たちにより、プリオラトを復活させ、最高峰のワイン造りを目指す運動がスタートしたのです。

まず、スペインで有名なガルナチャ種とマスエロ種といった土着品種で栽培をスタートさせます。ブドウ栽培や醸造方法を現代的な視点から改善し、素晴らしいワインを生み出すことに成功します。

1991年に販売された赤ワインが、あのロバートパーカーの目に止まります。

「プリオラトのワインは、スペインで最も優れている」。多くの批評家たちから評判を獲得したプリオラトは、この4人組の働きかけにより、完全復活を遂げたのです。

注目されるプリオラト

4人組が登場する前の1990年の初頭には、プリオラトには生産者は15程度しかいませんでした。しかし、4人組の成功を知った多くの生産者たちがプリオラトへと殺到。2006年になると、80を超える生産者たちがこのプリオラトでワイン造りを行うようになったのです。

ガルナチャやマスエロ、ペドロ・ヒメネスといった土着品種を使用する生産者から、カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーなど、国際品種を栽培する生産者までスタイルはさまざまなです。

プリオラトのワインは、モダンなワインといわれており、現代の好みに合わせたワイン造りが基本です。土着品種の単一ワインから、ボルドーブレンドなどが存在しています。

乾燥地域、温暖な気候、傾斜地帯であることかブドウが健全に育ち、ここ数十年のヴィンテージチャートは、素晴らしい出来映えの年が多くあります。まず、間違いない味を手に入れるには、プリオラトはとても安心できる産地ともいえるのです。

アルバロ・パラシオスのワイン

現在、数多くの生産者たちがワイン造りをするようになったプリオラト。そんな生産者のなかであって、精力的にこだわりの高級ワインを製造し続けているのが、アルバロ・パラシオスです。

4人組のうちのひとりであり、1997年に自らのワイナリーを創立しています。アルバロ・パラシオスは、シャトーペトリュス、スタッグスリーブといった超高級ワインを造るワイナリーで修行をしており、モダンなワイン造りを得意としています。

年間降雨量は400mmを下回るような、灌漑が必要な地域性でありながらも、粘板岩土壌であることから、地中深くまでしっかりと水分が行き届き蓄えることが可能です。そのため、良い側面でブドウにストレスがかかり、糖度が高い健全なブドウ栽培を可能にしています。

ワインは、カジュアルなラインのカミンス・デル・プリオラートから、数万円を超すレミルタというトップレンジまで幅広く造られており、どれもリッチさとフレッシュさを兼ね備える、素晴らしいワインたちです。アルバロ・パラシオスこそ、プリオラトを代表する生産者でしょう。

まとめ

プリオラトは、多くの産地のなかでもかなり特異な場所として知られています。お伝えしてきたように、急激に名声を手に入れたことで、スペインで二箇所しか選ばれていない、D.O.Caに選ばれています。

しかし、ワインの専門家やファンたちからは、「スペインらしさが無い」という評価も受けています。世界的なモダンな味わいを造ることで、名声は獲得できるかもしれませんが、その土地らしさが失われているというのです。

そのため、プリオラトで最も素晴らしいといわれるワインは、古樹のガルナチャ種から生み出される赤ワインとされています。フィロキセラから生き残った希少な古樹のカリニャンは、まさにプリオラトの味を表現しています。

ぜひ、プリオラトのワインに興味がある方は、カリニャン種のワインから初めてみてはいかがでしょうか。