はじめに

ワインを選ぶ時、ヴィンテージで選ぶ方もいるかもしれません。ワインは熟成するお酒であり、その熟成方法や期間によって味わいが大きく変化していきます。

日本酒や焼酎、ウイスキーも熟成をさせることが多いですが、ワインの熟成とは少し違ってきます。ワインの場合、果実由来の成分や発酵、醸造時に発生する酵母や香り成分、酸などの複雑な要素が絡みあって味わいを変化させます。ワインは熟成のお酒といわれるほど、多くの手間をかけて市場へと出回って行くのです。

さて、そんなワインの熟成なのですが、どのような理由で熟成するか、どういった方法で熟成させるのか知らない方も案外多いでしょう。

ヴィンテージが古ければ、古いほど良いと思われている方もいるようですが、それは少し違うのです。今回、ここではワインの熟成についてを紹介します。役に立つので、ぜひ覚えておきましょう。

ワインの熟成とは?

まず、根本的なところから確認します。そもそも、ワインの熟成とは何なのでしょうか。熟成は、ワインが樽や瓶内でさまざまな液体中の成分や酸素と反応し、味わいが変化して行く工程を指します。

熟成の目的は、荒々しさが残っていたり、生産者が思う味わいへと変化させていくために行います。熟成のピークは飲み頃と表現され、それを過ぎると劣化したワインとなり、早すぎればまだ熟成が足りないなどそういった表現となります。

ただし、飲み頃に関しては飲み手の裁量によるところが大きく、まろやかで豊潤となった時を飲み頃と思う人もいれば、枯れてしまったような味わいを飲み頃とする人もいます。ワインは生産者の手を離れてしまえば、あとは飲み手のものとなるので、飲み頃の味わいは自分で決めるということになります。

高級ワインは樽で熟成

市場に出回っている高級ワインの殆どが、樽で熟成されています。1000円台のワインであっても樽熟成にはこだわっている場所もありますし、高額なワインだから絶対に樽熟成をしているとは限りませんが、多くの場合は樽熟成は高級ワインで行われていると思ってよいでしょう。

ただし、赤ワインはほとんど樽熟成を経ている場合が多く、白ワインやソーヴィニヨンブラン、シャルドネ、ミュスカデ、シャンパーニュ用のブレンドワインは樽で熟成させられることがあります。

樽熟成を行う理由は、樽の香り付けなどではなく、樽を利用して適度に酸素と液体を接触させる、「酸化熟成」を行うためです。空気中の20%は酸素といわれていますが、酸素とワインが絶妙なバランスで触れ合っていくと味わいが良い方向へと変化していきます。

それであれば、樽ではなく適当に大きなタンクに入れて空気に晒しておけば良いと思うでしょうが、過度に酸素に触れると劣化が始まります。ワインが劣化する最大の原因は、酸素との接触です。

仮に、ワインを購入してきて口を開けて置き、2日間保存すると酸っぱくなってしまい、ワインビネガーへ近づいてしまいます。しかし、この酸素もバランス良く接触すれば、タンニンが穏やかになったり、アントシアニンによって色調が安定したり、香りも複雑性を出し始めます。ワインの樽熟成は、とても繊細なものなのです。

ステンレスタンクでの熟成とは?

では、ステンレスタンクでの熟成とは一体なんなのでしょうか。ステンレスタンクは、多少は酸素が触れることもありますが、基本的にはほぼ密閉された空間での熟成ですので、酸素接触は殆ど起こりません。

多くの白ワインで行われるステンレスタンクでの熟成には、とある理由があるので覚えておきましょう。白ワインはフレッシュ&フルーティーな味わいが求められるお酒です。一部の高級白ワインを除けば、できるだけシャープでスッキリした、冷やして美味しい味わいが求められるでしょう。

酸素と触れないということは、還元的な熟成となるので、アルコールとワイン中の各種酸が反応して新たな成分を作り出します。それが、エステルというものです。酢酸エチルやカプロン酸エチル、カプリン酸エチルなど、ワイン中には160を超えるエステルという香り成分が含まれているようですが、これらが青リンゴやパイナップル、バラの花などの香りを感じさせる元となっています。

酸素と液体が触れないことにより、これらの成分が多くなっていくわけです。ただし、還元的熟成の注意点としては、硫化水素などのイオウの成分を出し過ぎないことです。過度に還元的な状態で放置してしまうと、温泉のような香り、腐った卵などの香りへと悪化していきます。

樽熟成に使われる樽

樽熟成とステンレスタンクでの熟成についてを説明してきました。ちなみに、瓶熟成は後者に近い還元的熟成であり、良い条件で保存することで数十年の熟成を行うことができます。

さて、ワインの熟成に樽を使用していることは分かっていると思いますが、その樽にも多くの種類が存在しています。熟成に使われる樽には大きく分けて二つあり、それらはフレンチオークとアメリカンオークと呼ばれ、目指すワインのスタイルによって使い分けられています。

ただし、ワインの場合はフレンチオーク製のバリックと呼ばれる小樽での熟成が多いようです。高級オーク産地で知られるトロンセの樽が人気であり、アメリカンオークは比較的ウイスキーやブランデー、焼酎の熟成に用いられています。

後者は、目がとても粗いために大量の酸素を取り入れることが可能です。過度な酸素を入れてしまうと劣化しやすくなるワインは、微量の酸素を供給するフレンチオークが向いているようです。また、樽熟成を行うことで先述したように味わいのマイルド化が起こりますが、樽からの香り成分などの恩恵を受けることも可能です。

高級ワインは樽熟成が行われていますが、基本的なワインは長くても2年ほどの熟成です。樽熟成は酸化し過ぎてしまうと失敗となりますし、樽由来の成分を抽出しすぎることで、ブドウ由来の香り成分などもマスクしてしまいます。

結果的に、どんなブドウであっても構わないという、ワイン造りの根幹を揺るがす自体に陥ってしまうわけです。さらに、樽で発酵させるというのは至難の技であり、微生物が悪い反応を起こしやすくなります。

高級ワインの樽熟成のテクニック

高級ワインは樽熟成が行われていますが、基本的なワインは長くても2年ほどの熟成です。樽熟成は酸化し過ぎてしまうと失敗となりますし、樽由来の成分を抽出しすぎることで、ブドウ由来の香り成分などもマスクしてしまいます。

結果的に、どんなブドウであっても構わないという、ワイン造りの根幹を揺るがす自体に陥ってしまうわけです。さらに、樽で発酵させるというのは至難の技であり、微生物が悪い反応を起こしやすくなります。

しかし、一部の高級ワインではブドウが健全であり、さらには熟成などに耐えうる品種であることを条件に樽内での発酵も行っています。ほど良く酵母が膜となることで、樽の成分の抽出を防ぐというテクニックを使っています。

また、白ワインでの樽熟成の場合はバトナージュといって、抽出されたアミノ酸、タンパク質を撹拌して旨味を全体に広げる作業なども行われています。高級ワインが樽を必ず使っているのには、こういった樽でしか得られないメリットを最大限享受し、複雑性のあるワインに仕上げるためなのです。

まとめ

ワインが樽で熟成されるのは、ファッション目的や樽香をつけるだけという単純な理由ではありません。ぜひ、熟成についての知識をつけ、ワインの世界を今以上に楽しんでみてください。