はじめに

今、ワイン業界を震撼させているのが、『偽造ワイン』です。ただし、問題は安価な価格のワインの産地を偽装してそれらを市場に出回らせているということではなく、その被害の殆どが高級ワインであるということです。

偽造ワインの被害は、ブランド品保護専門サイトの調べによると2016年5月の段階で1億ドルもの金額の偽造ワインが流通しているといわれています。しかしながら、それはあくまで調べてあって、総額では4億ドルほどの被害は小売商の被害を受けているともいわれています。

世界中の高級ワインといわれるものが偽造されており、それらがオークションや高級ワインショップで販売されていることは、今ワイン業界が本当に頭を抱える大問題へと発展しています。今回、ここではワインの偽造について、そしてその対策方法などについてを紹介していきます。

ワイン偽造とは?

偽造ワインとは、ボトルの中身を入れ替えて販売したり、ラベルだけを貼変えて販売されているワインです。

偽造ワインというと、ロマネコンティのような超高級ワインだけが出回っていると思われがちですが、ブドウ品種を誤摩化したバルクワインであったり、格安で売られている店鋪のワイン、個人輸入を行っているネットショップのワインなどさまざまなものがあります。

問題は、そのワインの被害金額は調査が入った店舗や自ら鑑定を依頼したワインで無い限り分からず、本物と思って飲んでしまっている人がいるために、はっきりとは分からないというとなのです。

市場に偽造ワインが出回る理由

さらに悪質なのが、偽造ワインの販売組織を大本にしてさまざまなところを経由してワインが流通し、結果的に途中からは偽造ワインと思っていない業者たちによって、本物として堂々と売られてしまうことです。

ワインの場合、商品を全て味見をすることが出来ないことや、味見をしても分からない人たちの方が多いために偽造しやすいといえます。偽造ワイン鑑定の権威によると、なんと中国においては市販される高級ワインの半分以上は偽造であるとすら、いわれているのです。

実際に起こった裁判

ワイン偽造が注目されたのは、ルディ・クルニアンワンという人物が逮捕され、そのドキュメンタリーが映画化されたことでしょう。

ドキュメンタリー映画「Sour Grapes」(サワー・グレープス)という、ルディ・クルニアンワンというワイン偽造の悪質な人間が逮捕されるまでのドキュメンタリー映画であり、イギリスで公開されワイン関係者たちに衝撃を与えました。実際に起こった事件であり、今も彼は収監中となっています。

悪質な手口とは

偽造ワインはさまざまな造られ方がありますが、ルディ・クルニアワンは中身を入れ替えるだけのシンプルなものだったようです。造られ方は、本当の格付ワインを半分入れ、あと半分をカリフォルニアのカベルネなどの濃厚ワインにして、複雑性を生み出したものとして造られていました。

また、安価なワインを造れる地域で赤ワインを造り、それらに軽く濃厚なワインを混ぜ入れていたことも分かっています。こういった悪質なワイン造りを行っていたのにも関わらず、なぜ人は見破ることができないのでしょうか。

高級ワインは簡単に飲まれない

まず、アナタが高級ワインを購入したとしたら、どのタイミングで飲むでしょうか。恐らく、数千円のワインであれば、購入したその日に開けてしまうことは容易に考えることができます。

しかしながら、1本数万円から数10万円、さらに100万円近い価格のワインだったらどうでしょうか。その日に、軽い気持ちでサクっと開けてしまう人はいるでしょうか。

仮に、セレブならそうするというかもしれませんが、その人たちがせっかくのワインを一人で飲むでしょうか。つまり、高級ワインを口にするのは数年先、数十年先の可能性が高く、その頃にはワイン偽造犯は儲けるだけ儲けてしまい、行方をくらましてしまうのです。

味が分かる人は少ない

そして、大問題なのが熟成している赤ワインや白ワインを飲んで、その味わいを明確に理解できる人が少ないということです。例えば、カベルネソーヴィニヨンが1年しか熟成されていないのに、異様な味わいがあれば気がつくかもしれません。

さらに、ピノノワールといわれてワインを購入したのに、重厚感のあるタンニンがギシギシしたワインが入っていたら、明らかにおかしいと気付けるはずです。ただし、高級ワインに関したらどうでしょうか。

ボルドーワインに関しても、前述したように、半分は格付シャトーワインを入れられ、リッチさを現すカリフォルニアのカベルネを混ぜられたら分からなくなってしまいます。

勘違いや思い込みをすることを逆手にとる

現に、ルディ・クルニアワン被告が裁判で語った言葉に、「チリとボルドーのワインの違いをハッキリと別物であるとブラインドで分かるソムリエは世界中にいない」というものがありました。

結果的に、そのエチケットやブランドに脳内の味覚を司る部分が騙されてしまい、そういうものであると勘違いしてしまうのです。

さらに、あなたは49年ものと50年もののワインのどこが違うのか、ハッキリと説明をすることができるでしょうか。これが、偽造ワイン犯たちの作戦であり、ワインが味わいを超えて投資目的となってしまった状況の暗部なのです。

多く偽造されているワイン

高級ワインは偽造されているといわれても、では一体どこのワイナリーのワインが偽造されているのかハッキリと分からない方も多いでしょう。ここでは、いくつか偽造ワインが造られている有名ワイナリーのワインを紹介します。

まず、圧倒的に多いのはシャトー・ペトリュスです。アメリカのラスヴェガスでは、生産量より多くのシャトー・ペトリュスが売れているという皮肉の言葉まで生まれています。さらに、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティも偽造ワインが多いことで知られています。

ボルドーも偽造ワインが横行

海外でも、ICをつけたワインを販売するなど、続々と偽造ワイン防止へ向けて新対策が進みつつあります。

そして、あの日本の企業である凸版印刷でも「CorkTag」という、偽造ワイン防止のためのNFC対応ICタグを開発することに成功しました。

あの、アンリ・ジャイエの愛弟子といわれるブルゴーニュ地方の高級ワインを造る「ドメーヌ・エマニュエル・ルジェ」が既に採用しており、これから偽造ワインの防止に一役買ってくれる可能性が期待されています。

日本の会社も偽造防止に乗り出す

海外でも、ICをつけたワインを販売するなど、続々と偽造ワイン防止へ向けて新対策が進みつつあります。

そして、あの日本の企業である凸版印刷でも「CorkTag」という、偽造ワイン防止のためのNFC対応ICタグを開発することに成功しました。

あの、アンリ・ジャイエの愛弟子といわれるブルゴーニュ地方の高級ワインを造る「ドメーヌ・エマニュエル・ルジェ」が既に採用しており、これから偽造ワインの防止に一役買ってくれる可能性が期待されています。

まとめ

偽造ワインに関しては、しっかりと出所が分かっているワインを置くワインショップ以外で購入しないことが大切です。

また、できることであれば、直接ワイナリーで購入するということでも良いでしょう。ワイン偽造犯たちは、こちらが対策を立てても、必ず抜け道を探します。

ぜひ、自分自身しっかりと対策を考え、ちゃんとした正規のルーツでワインを購入しましょう。