はじめに

私たちは、普段何気なく日本酒を飲んでいます。あまりにも身近なお酒であり、国酒であることからも、その製造方法にはさほど関心が無かったという方もいるでしょう。しかし、吟醸酒が注目され、地方酒が大きく注目し始められている今、その製造方法にも高い関心を抱く人たちが増加しております。

今回、ここでは知られざる日本酒の製造方法を紹介します。実は、とても複雑で難解な作業であり、世界でも類を見ない素晴らしさです。では、早速いってみましょう。

精米から白米へ

まず、日本酒造りで大切なのは玄米を精米する作業です。この時、表層部に付いている胚芽を除去していきます。雑味などが多く入ってしまうと、日本酒が洗練した味わいになりません。とはいえ、削り過ぎることも問題で旨味が無くなります。ここでどれだけ削るかが、日本酒の味わいを決める大きなポイントです。

そして、洗米で表面の汚れなどが取り除かれ、浸漬という米粒全体に水分を含ませる作業を行います。米を蒸す時にムラとならぬよう、行われる大切な作業となっています。

蒸米の方法と大切さ

浸漬が終わった白米は、次に強い蒸気によって蒸される工程へと入ります。米を蒸す工程はさほど注目されている作業ではありませんが、この工程を外すと日本酒はできないので大切な作業です。

ブドウのように、果汁と糖分があれば、酵母が勝手にアルコール発酵をスタートさせますが、米は蒸さない限り糖分となりえる物質が無いため、アルコール発酵がスタートしません。この作業により、デンプルがアルファ化し、甘みを出してアルコール発酵のもととなる状態に仕上げるのです。

麹造りの工程

蒸された米は、麹造りの工程へと進みます。麹室と呼ばれている専用の部屋に蒸米が持ち込まれ、そこで種麹と呼ばれる麹菌がバランス良く全体に振りかけられます。蔵元によって麹菌の広げ方は違ってきますが、ようは全体にムラなくまんべんなく麹菌が混ざることが条件とされます。

この麹に含まれている酵素が、その後の酒母であったりもろみの無い内部で米のでんぷんを糖分に分解する役割を持ちます。また、酵母は4つに分けられますが、後述します。

酒母造りの工程とは

日本酒では、酒母と呼ばれる重要な材料が造られます。まず、専用のタンクに乳酸と麹を入れて、水麹というものを造ります。その後、この水麹に蒸米と酵母を投入すると、酵母が増殖していきます。

酵母を培養することにより、安全に日本酒造りを行うことができるのですが、その酵母の種類などによってそのお酒造りの香りや味わいが大きく変化します。2週間程度、酒母造りは行われますが、この酵母の繁殖に失敗してしまうと全てが台無しですので、杜氏としても神経を使う作業となります。

三段仕込み

日本酒に使われている用語で、三段仕込みという言葉を聞いたことがある方は案外多いかもしれません。ラベルとして貼ってあったり、販売している時の謳い文句としてこの言葉が出てきます。

これは、もろみを発酵させるための三段階のテクニックを指します。酒母が入ったタンクに水と麹、蒸米が入っているものをもろみと呼びますが、ここではアルコール発酵と麹がデンプンを糖化させる、二つの反応が同時に起こっています。基本的には、もろみを安全に発酵させることが目的ですが、なぜ三段とされているのでしょうか。

三段仕込みの内容

三段仕込みは、まず発添え、仲添え、留添えの三つの作業を総称したものです。発添えは、酒母に対して同量の水と麹、蒸米を入れます。仲添えは、発添えの3日後に倍程度の水、麹、蒸米を入れて発酵が行われます。そして、更にその倍の量を後日仕込む作業が留添えです。

酵母を低温で長く、安定して増殖させることにより、フルーティーで旨味のある日本酒へ仕上がります。さらに、三段階に分けることで、失敗を防げるメリットもあります。ここが、日本酒というお酒の難しい作業といわれている点のひとつです。

上槽とオリ引き、ろ過

三段仕込みで仕上げられたもろみは、およそ3週間程度発酵期間がとられます。もちろん、蔵元の目指す酒質などによってその期間に違いはありますが、目安として大抵3週間と覚えておくとよいでしょう。

さて、次にアルコールの濃度と香りのバランスをチェックしながら熟成させられます。その時、上槽と呼ばれる作業で生酒が造られます。生酒の状態では、酒粕などもあり濁っているので、オリ引き、ろ過と清澄されていきます。この状態で出荷されている酒が、生酒と呼ばれています。

火入れ作業

上槽で搾り取られた生酒をろ過した状態でも、十分に旨味を感じられますが、やや荒々しさが残っていたり、酵母が残っていたりと、安定した酒質とは言い切れません。そこで、火入れという作業が取られます。これにより、生酒に残されている酵母や乳酸菌を死滅させ、酒質の安定化を図ります。

酵母などが残っていると、オリとして日本酒を濁らせてしまい、見た目に美しい状態で無くなるからです。仮に、早めに飲まれるのであれば、生酒でも問題はありませんが、長期間飲まれない可能性がある場合は、火入れをしておくことが保険にもなるわけです。

熟成と調合、割水

割水をされた日本酒は、さらに殺菌処理を行い、洗瓶用水で現れた瓶へと詰められて出荷されます。生酒などは、生々しく日本酒らしい味わいではありますが、品質劣化しやすくデリケートですので、冷蔵保存は必須です。

火入れのものは、長持ちはしますが、火入れなどが行われているために、旨味や香味成分は生酒に比べるとやや劣ります。このように、自分が飲みたいスタイルの日本酒を探す時、どのような製法で出荷されているかを知ることが、大切な指針となり、選び方に幅を持たせるのです。

安心さと生々しさ

割水をされた日本酒は、さらに殺菌処理を行い、洗瓶用水で現れた瓶へと詰められて出荷されます。生酒などは、生々しく日本酒らしい味わいではありますが、品質劣化しやすくデリケートですので、冷蔵保存は必須です。

火入れのものは、長持ちはしますが、火入れなどが行われているために、旨味や香味成分は生酒に比べるとやや劣ります。このように、自分が飲みたいスタイルの日本酒を探す時、どのような製法で出荷されているかを知ることが、大切な指針となり、選び方に幅を持たせるのです。