ウイスキーと樽の関係性

ウイスキーにとって樽はとても大切な存在です。まず、樽がウイスキーに影響を与えるポイントとしては、樽にどれだけのスピリッツが入っているのかに大きく関係していきます。

仮に、小さな樽にウイスキーを入れておけば、オーク樽由来のラクトン、ヴァニリンなどの成分が溶け出すため、オーク由来の香りや味わいが前面に押し出されるウイスキーができあがります。一方、大樽に詰め込む場合は、スピリッツ全体にオーク樽由来の成分が行き渡る量が少なくなるため、より原酒に近い味わいが楽しめるということです。

スピリッツを入れる回数

オーク樽は、何度でも使い回すことができるわけではなく、何回スピリッツを入れたかによって、その成分の抽出量が変化します。新樽に初めて入れられたウイスキースピリッツは、当然ながらたっぷりとオーク樽由来の成分がスピリッツへの移ります。

しかしながら、それ以降に入れられるスピリッツは、樽由来の成分の影響が大変少なくなっていきます。樽は、適度な酸化熟成を行うためだけの入れ物となり、樽の持つ個性をあまり受けたく無いウイスキースピリッツが、ここに入れられることとなるのです。

樽の種類で味わいの違いを楽しむ

ウイスキーは樽の違いによって、大きく味わいに違いが生まれます。先ほどお伝えしたように、樽の大きさやスピリッツがいくつ入っているかなど、こういった細かな部分も影響されますが、そもそもどのような樽材を使用しているのかで、できあがるウイスキーの味は大きく左右されます。

ウイスキーに使用されている樽の種類としては、一般的には「アメリカンオーク」、「ヨーロピアンオーク」、「ミズナラ」といったところです。もちろん、大別されたこの3つの樽材のなかにも個々にさまざまな種類がありますが、ひとまずは大きな括りでその味わいの違いを確認していきましょう。

アメリカンオークの味わい

アメリカンオークは、多くのウイスキーで使用されている樽材です。アメリカンオークでつくられるウイスキーは、爽やかで濃厚な香りが特徴的となります。樽由来のバニラのテイストはもちろんですが、まだ熟しきれていないバナナの香りなどもあり、フルーツ系のエステルの香りを楽しむことができます。

酸味も爽やかでありながらも、濃厚な味わいに変化していくところが面白いところです。熟れた果実のような、南国のトロピカルフルーツを思わせるテイストの味わいが魅力的です。

ヨーロピアンオークの味わい

ワインの場合、フランス産のオーク樽がもっとも高級品といわれていますが、ヨーロッパにはさまざまなメーカーの樽材が揃っています。ウイスキーのようなスピリッツ系に使用されるのは、シェリー樽のようなものが多いようです。香りは、ダークラムや糖蜜、レーズンなどの乾燥させた果実を思わせるといった特徴があります。

また、ワインにも感じられる樽由来のレザーや煮詰めたプラム、バランスの良い甘みを舌の上で感じることができます。比較的、ドライフルーツ様の香りが特徴的であり、刺々しさは無いようです。

ミズナラの味わい

ジャパニーズウイスキーなどでよく見られるのが、ミズナラを樽材として使用したウイスキーです。繊細な味わいと思われるミズナラですが、実はアメリカンオークやヨーロピアンオークに比べると、とても強い芳香を放つことで知られています。樽材らしい樹脂の香りと、白檀、バニラの香りをしっかりとキャッチすることができるでしょう。

ラズベリーの香りがありながらもオイリーさもある、濃密な香りも楽しむことができます。そして、ミズナラの最大の特徴が引き締まった酸です。酸がしっかりと感じられることからも、濃厚でありながらバランスが良いと感じるのでしょう。

セカンドフィルを楽しむ

樽材は何度かスピリッツを入れられ、樽材からの成分の抽出量が無くなったらその役目を終えます。スピリッツが初めて入れられた樽材でつくられるウイスキーは、ファーストフィルと呼ばれ、樽由来の特徴がしっかりと感じられる味わいとなります。

しかし、最初の樽熟成でかなりの成分が抽出されてしまうため、セカンドフィル、サードフィルは比較的、酸化効果を経たウイスキーがもともと持つ香り成分が主体となります。ウイスキースピリッツが本来持つ、果実味などが強い液体の場合、セカンドフィル、サードフィルの味わいの方が面白いといわれているのです。

樽材の種類と特徴

樽材の味わいの違いを見てきましたが、簡単にどのような樽材がどういったウイスキーに使用されているかを確認します。

アメリカンオークの場合、バーボンと呼ばれるウイスキーの殆どに使用されていることで知られています。ヨーロピアンオークはタンニンを多く含んでいるために、シェリーのような酸化熟成かつ長期熟成を目的とした酒類に使われています。また、コニャックなどのブランデーやワインに使われるのがフレンチオークですが、スパイシーさと繊細さもあるためにウイスキーでも利用されることがあります。

バーボンバレル

ウイスキースピリッツが入れられる樽材のなかで、もっとも代表的な樽材がバーボンバレルといった、200ℓスピリッツを入れることができる樽材です。内側をチャーリングした新樽以外、バーボンでは使用できないために、その使用済みのバーボンバレルがさまざまなウイスキーで活躍します。ジャパーニーズウイスキーはもちろんのこと、アイリッシュウイスキーやスコッチウイスキーにも利用されています。

また、ラムやテキーラといったリキュールにも利用されています。バーボンの仄かな香りがついているために、これもまた樽由来の特徴として各ウイスキーの個性として表現されています。

さまざまな樽材

ウイスキースピリッツを熟成させる樽の種類によって、そのウイスキーの味わいが大きく変化します。ただし、ブレンデッドウイスキーの場合、そのメーカーが目指す味わいがブレンダーによって生み出されるため、樽の個性という面では強烈な違いを判別するのは難しい可能性があります。

使用された樽による味わいの違いを知るためには、シングルモルトがもっとも分かりやすいので、もし試されたい方はシングルモルトウイスキーでその違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。

シングルモルトで楽しもう

ウイスキースピリッツを熟成させる樽の種類によって、そのウイスキーの味わいが大きく変化します。ただし、ブレンデッドウイスキーの場合、そのメーカーが目指す味わいがブレンダーによって生み出されるため、樽の個性という面では強烈な違いを判別するのは難しい可能性があります。

使用された樽による味わいの違いを知るためには、シングルモルトがもっとも分かりやすいので、もし試されたい方はシングルモルトウイスキーでその違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。