日本酒に使用される酵母は相当な数存在する!

日本酒のラベルのなかには、「協会6号」とか「協会10号」など、協会という言葉が付属しています。以前、培養酵母が作られていなかった頃には、酵母は全て自然酵母だったため、アルコールは発酵はある意味ではギャンブルでした。

日本醸造協会という協会が帆布しているのが、これら「協会酵母」といわれる培養酵母で、なんと数十種類あるといわれています。それぞれに特徴が違うため、どれを使うかがポイントになっていきます。

酵母の働きって何?

酵母の特徴を知る前に、酵母自体がどのような役目を持っているかを知る必要があります。まず、日本酒は米を一旦蒸して、でんぷん質を多く生成させます。そのままでは分子が大きいため、麹菌を使用してでんぷん質を細かくし、それを酵母が食べてアルコールへと生まれ変わります。

このアルコール発酵の時、酵母によってさまざまな副産物が生成され、それらが香りや味わいに起因します。酵母の種類によって出す香りや味の成分が違うため、どの酵母を選択するかが大切といわれているのです。

日本酒を安定的に造るために開発された!?

自然の酵母の場合、独特な香味に仕上がるのですが、如何せんバクテリアにおかされる可能性が高く、さらには酒質が年ごとにバラつくという問題がありました。

明治時代に入ると、酵母菌が発酵に携わっていることが発見されたため、酵母を選抜して乾燥酵母などがつくられます。リスクが全く無くなった訳ではりませんが、自然発酵よりもずっと安全で安定的な日本酒造りができるようになり、出荷数も増加していったのです。

協会酵母の種類①

では、ここからは協会酵母について紹介していきましょう。恐らく代表的なのが、「協会6号」です。「K6号酵母」「新政酵母」などとも呼ばれており、秋田県の銘酒の新政のもろみより分離されたものです。低い温度で旺盛に発酵し、酸が穏やかで深みのある味わいに仕上がります。生もと系に適していると言われています。

そして、「協会7号」です。こちらは、長野県の真澄のもろみから分離されたもので、オレンジ様の香りが特徴です。近代酒質の基調であり、酸が強くフルーティーさがウリの酵母です。

協会酵母の種類②

では、続いては「協会9号」を見ていきます。かなり香気があるために吟醸酒に向いており、香り高い吟醸酒ブームに一役買っています。熊本県酒造研究所の保存酵母で分離されており、現在でも培養が続けられています。

そして、今話題のカプロン酸エチルを多く出すのが、「協会1501号」です。酸が少なく、かなりフルーティーな香りを呈するため、大吟醸酒などに向いている酵母といわれています。

協会酵母の種類③

エステルが多く出すことができる酵母として注目されているのが、「協会1701号」です。「高エステル生成酵母」とも呼ばれており、今トレンドのカプロン酸エチル、酢酸イソアミルなどのフルーティーな日本酒に使われています。

酸やアミノ酸生成が少なく、非常にスッキリとした味わいを生み出す酵母が、「協会1801号」です。エステル高生産性酵母であり、こちらも人気の酵母です。

通向きの酵母

香り高い、エステルを多く出す酵母が人気ですが、濃醇酒向きのお酒を造る酵母も通に人気です。「協会8号」などは、淡麗辛口がトレンドとなった時に発売中止となりましたが、今敢えて使い出した蔵元も出現してきました。

また、マニアックなところでいくと「28番酵母」は、酸度が高く、リンゴ酸が有機酸の8割を占める独特な酵母です。酸がしっかりとしているため、切れ味が良く、長期熟成に耐えうる強い酒質の日本酒を生み出します。

ユニークな酵母

ユニークなところでいくと、「赤色清酒酵母」という酵母があります。こちらは淡いピンク色の濁り酒用に生み出された酵母です。甘口かつ、アルコール度が低い女性向きの日本酒ができあがります。突然変異によって赤色になる反応を利用した酵母ですが、古くからこの作用が確認されており、「猩々もろみ」と呼ばれて奇怪現象として注目されていたようです。

ちなみに、「K10号酵母」であり香りもとてもフルーティーとなります。

ワイン酵母もある!

実は、日本醸造協会ではワイン用の酵母も配布しています。亜硫酸耐性の強い「ブドウ酒用きょうかい1号」、低温発酵に向いている「ブドウ酒用きょうかい3号」などです。

ほか、Australian Wine Research Instituteが管理しているものなど、やはり外国のものに種類が多いようです。たまに、ワイン酵母で仕込む日本酒が売られていますが、こういった酵母で日本酒を造った…と理解しておくと分かりやすいでしょう。

酵母だけでは語れない!