甘口ワインとは?

まず、甘口ワインとは何かということから説明しましょう。大雑把に説明すると、残糖分が高く、甘みの強いワインを総じて甘口ワインと呼んでいます。

ただし、この甘口ワインには大別して二つの造り方があります。ひとつは、砂糖などを添加するという方法で、ひとつは自然の甘みを活かしたものです。当然ながら、後者の方が高級甘口ワインとして扱われているだけでなく、その味わいも非常に高貴なものへと変わっていきます。次に、甘口ワインがどのようにして造られているかを紹介していきましょう。

甘口ワインの造り方

自然な甘みを残す造り方というのは、アルコール発酵のメカニズムにヒミツがあります。アルコール発酵は、ブドウ果汁に含まれるグルコースとフルクトースを酵母が餌として分解し、ニ酸化炭素とアルコールへと変化させる化学反応です。通常、酵母が糖分を食べ尽くしたところで発酵はストップし、それがこのワインの最終アルコール度数となります。

逆に、糖分を残したまま発酵をストップさせると、アルコール度数はやや低めながらも甘みの残ったワインとなります。これが、甘口ワインの造り方の基本となります。

なぜ砂糖を添加だとダメなの?

さて、ここで疑問なのが砂糖を添加してしまえばいいのに…ということです。実は、良い甘口ワインというのは甘さをメインとするのではなく、アルコール度数と甘み、酸のバランスが大切となります。ただ砂糖を添加しただけだと、意味も無く甘ったるいワインとなります。

さらに、酵母がワイン中に残っている状態なのに糖分が高過ぎると再発酵を瓶内で起こし、コルクが飛んだり、最悪瓶が破裂したりするのです。そのため、絶妙なバランス感覚で味を仕上げること、熟練した二酸化硫黄の添加量の技術が必要となります。適当に砂糖を添加するのは、良いワインを造るには適していないのです。

世界の高級甘口ワインの造り方

高級甘口ワインの造り方ですが、ブドウを遅摘みした後に干すなどの作業を行い、糖度を通常の数倍上げてから発酵へと進みます。そのため、十分なアルコール度数を持ちながらも、しっかりと酸と甘みを残した高貴な味わいに仕上がるわけです。

さらに、長期保存が可能になるので、銘醸甘口ワインともなると、10年以上は熟成させてから市販されます。ブドウが干されれば当然、搾ることができる果汁は極端に少なくなるため、通常のスティルワインの数倍のブドウが必要となります。これが、価格が高くなる理由のひとつでもあるのです。

貴腐ワイン

ここからは、早速甘口ワインの種類をチェックしていきます。まず、「貴腐ワイン」です。これは貴腐ブドウという、灰色カビ菌という本来ブドウにとって害となる菌をうまく作用させて、糖度を高めたブドウで造られる甘口ワインです。

世界には3大貴腐ワインといわれるものがあり、ひとつがフランス・ボルドーの「ソーテルヌ」のワイン、ドイツの「トロッケンベーレンアウスレーゼ」、ハンガリーの「トカイアスー」となっています。ソーテルヌにある、『シャトー・ディケム』の貴腐ワインは余りにも有名で、100年以上は熟成に耐えうるといわれています。

アイスワイン

一時期、とある人気ドラマで登場して爆発的ヒットとなったのが、「アイスワイン」という甘口ワインです。こちらは、ドイツやオーストリア、カナダが有名です。

遅摘みのブドウを使用するのは一緒なのですが、冬場の大寒波を利用してブドウを凍らせ、糖度が急上昇している瞬間を狙って収穫されたブドウを使って醸造される甘口ワインです。天候に左右されるため、非常に珍しい甘口ワインであり、価格も貴腐ワイン以上のものも存在しています。クリオ・エキストラクションという、人工的にブドウを凍らせるテクニックもあるようですが、自然のものとは別物と考えるべきでしょう。

糖度による階級で定められた甘口ワイン

ドイツやオーストリアには、収穫時のブドウの糖度などによって甘口ワインの階級が定められています。カビネットやシュペートレーゼ、アウスレーゼ、ベーレン・アウスレーゼなどがそれに当たります。これらは、遅摘みブドウの収穫時の糖度によって階級が定められており、糖度が高いほどトップカテゴリーになるようです。

そして、先述した「トロッケンベーレンアウスレーゼ」は、このカテゴリの中でトップクラスであり、非常に甘みのあるワインとなっています。1本100万円を超えるものなどもあるようで、非常に貴重なワインとして愛好家からも支持を得ています。

スパークリングワインの甘口

ワインブドウの持つ自然な甘みを引き立たせて造るのが、高品質な甘口ワインです。しかし、シャンパーニュをはじめとしたスパークリングワインにも甘口ワインが存在します。それが、「ドゥー」という残糖分の区分のスパークリングワインです。

スパークリングワインは、瓶詰め前にショ糖を添加して出荷することが多く、その残糖分によって呼び名が変化しています。例えば、「ナトゥーレ」は残糖分はほぼゼロです。その中でも、ドゥーは糖分を相当量入れており、かなり甘みの強い味わいとなります。デザートワインとして使われることが多い、あまり日本ではお目にかからない甘口ワインといってよいでしょう。

イタリアの甘口ワイン

イタリアには、「パッシート」という、ブドウを陰干しして糖度を高める技法を用いて造られるワインがあります。さらに、「ランブルスコ」という、赤ワインの微発泡性ワインという珍しいものがありますが、それも「ドルチェ」という甘口タイプが存在しています。

また、わらの上でブドウを数ヶ月乾燥させ、それを密閉タンクへと入れて発酵させる、「ヴィンサント」という甘口ワインも存在しています。これは、ビスケットにつけて食べられているなど、通常のワインの飲み方とは違った用途もあるユニークなワインとして知られています。

甘口ワインを楽しむと通になれる!