スキンコンタクトは白ワインだけ?

ちなみに、無作為に赤ワインを10本ほど検索してみてください。恐らくですが、スキンコンタクトという文字は、どこにも見当たらないと思います。

逆に、白ワインを10本適当に検索してみましょう。すると、10本1本はどれかに「スキンコンタクト」という文字が現れるはずです。実は、スキンコンタクトという技術が採用されているワインは、白ワインのみです。その理由を次に説明していきます。

果皮と果汁を浸漬させること

赤ワインの場合、果皮と種子、果汁を一緒に浸漬させ、醪の状態からアルコール発酵を行います。一方、白ワインの場合は通常、破砕をした後には直ぐに圧搾をして果汁のみがアルコール発酵の工程へと進みます。

スキンコンタクトというのは、実はこの果皮と果汁を圧搾する前にしっかりと赤ワインのようにつけ込む作業をいいます。仮に、「スキンコンタクトをしています」というPOPを見つけたら、果皮と果汁が一緒になった白ワインだ、と思えば良いのです。

何のためにするの?

美味しい白ワインというのは、人それぞれ違う観点を持っていますが、基本的にはフレッシュ&フルーティーさが大切です。そのため、できるだけ雑味を取り除き、フレッシュな状態で瓶詰めされることが求められます。

スキンコンタクトは、全くその逆といってもいいぐらいで、果皮や種子の成分を果汁に移します。実は、これは果皮や種子しか持っていない成分を果汁へと流し込み、より深みのある味わいにするためなのです。

どんな香りになるの?

では、スキンコンタクトを採用した白ワインはどのような香りへと変化していくのでしょうか。

基本的には、白ワイン特有のフルーティーな香りがするのですが、ブドウが持っている特徴香と言われる香りがより多く含まれるようになります。バラの花の香り、ヤマユリの香り、さらにはバナナやパッションフルーツなどです。どうして、こういった香りが増えていくのかは、果皮に含まれている特徴香の前駆体が関係しています。

結合を解くのが酵母!?

結合を解くのが酵母!?例えば、ソーヴィニヨンブランの場合、メトキシピラジン類という特徴的な香りが果皮に含まれます。しかし、これらの香りは糖と結合してしまっているため、ブドウの状態だと全く香りを感じません。

実は、この結合した香の前駆体はアルコール発酵を行う酵母の働きによって切り離されます。つまり、酵母がこの結合を決壊し、そのブドウの持つ香りをより多く遊離させてしまう、というとなのです。

果汁に前駆体を多く移す!

つまり、果汁中に多くの香りの前駆体があれば、アルコール発酵によってより多くの香りを持つ白ワインができあがるわけです。スキンコンタクトは、その名の通り果皮を果汁に浸漬させる技術ですので、じっくりと果皮からの成分を果汁に流し込むことで、香り豊かなほかにはないワインが仕上がるわけです。

しかし、そう簡単にはいかないのが、ワインの難しさです。果皮から香りの前駆体を多く移行しようとすると、劣化に繋がってしまうのです。

フェノールによる劣化

当然、スキンコンタクトは低温より高温で行った方がそれらの成分を多く抽出できます。ただし、ある一定の温度まで上げてしまうとカテキン類や非フラボノイド類、ケルセチンなどのフラボノール類などが異様に多く抽出されます。

何やら、良いような気もしますが、これらはワインに渋みと苦みを与えるのです。赤ワインのように、全体的なバランスを見ながら醸造されるわけではないので、結果的に中途半端なワインとなってしまうわけです。

長持ちしない?

さらに、スキンコンタクトを行う場合、好気的環境(酸素に触れやすい)が殆どですので、酸化のリスクもあります。白ワインの場合、色合いの変化からか、できるだけ酸素に触れさせない醸造法が採用されています。スキンコンタクトを行うことで、酸素にもろみが多く触れてしまい、色合いの変化や揮発性分が多く失われる、細菌汚染のリスクの高まりなど、それなりに難しいのです。

当然、最初から酸化してしまった白ワインの場合は長持ちせず、早めに飲まないと、ただの酸化したワインとなってしまうわけです。

オレンジワイン

とはいえ、絶妙なバランスでスキンコンタクトを採用して仕上げられたワインは素晴らしい味わいです。例えば、甲州やピノ・グリなどは、グリ系(灰色ブドウ)と呼ばれており、やや紫色をした果皮を持ちます。そのため、やや果汁に移り美しいオレンジ色へと変化していきます。

味わいは白ワインなのですが、ややタンニンなどの渋みもあるために、骨格がある重厚な白ワインとなります。香り成分も多く、ほかには無い独特のジャンルのワインとなるのです。

同じ品種で飲み比べが面白い!