発泡性の日本酒とは?

スパークリング日本酒と聞いて、いまいちピンと来ないという方も少なくはないかもしれません。このスパークリング日本酒というのは、要するに発泡性のある日本酒のことで、いわば炭酸ガスが含まれている日本酒ということになります。「活性日本酒」とラベル表記されることもありますが、これらも同様の意味を持つと考えられます。

ただし、この発泡性日本酒は、大きく分けてガスを充填しているものと、アルコール発酵で生じた二酸化炭素を閉じ込めたものの二つに大別されています。

瓶内二次発酵の場合

フランスのシャンパーニュなどで有名な「瓶内二次発酵」という醸造方法がありますが、発泡性の日本酒の一部もこの製法が採用されています。一度、アルコール発酵させた日本酒に、もろみが残ったまま瓶詰めしてしまう方法です。

通常、もろみ中には酵母が存在しているので、火入れをしたり、滓引きをしないと瓶内で炭酸ガスを発生させてしまいます。その性質を逆手にとり、瓶内でほどほどの炭酸ガスが充満するように仕上げられたのが、瓶内二次発酵で作られた日本酒なのです。

ガス充填で作られる日本酒

コンビニエンスストアなどでも手軽に手に入るような、大手メーカーのカジュアルな発泡性の日本酒の多くは、このガス充填によって造られているものです。純米酒の原酒を主に対象として、炭酸ガスを充填し、その後に醪をしぼって酵母による醗酵を行わせるという手の込んだ方法です。

大量生産に向いており、狙った炭酸ガス量や味わいを調節しやすいことからも、この方法がメジャーな製法として定着しているようです。

開け方

スパークリングワインを飲まれたことがある方であれば分かるかもしれませんが、瓶内にはガスが充満しているので、むやみやたらに開栓するのは危険です。一旦、軽くキャップ部分をあけて瓶内のガスを軽く逃がして、ゆっくりと開栓することをおすすめします。

さらに、滓が残っている場合がありますが、飲む前はゆっくりと撹拌することで旨味成分が全体に行き渡るので、おすすめです。ただし、保存は要冷蔵、さらには飲む前に振り過ぎてしまうと危険ですので注意しましょう。

味わいの特徴

発泡性の日本酒の味わいの特徴は、その蔵元の狙った酒質によって違うので一概には言えませんが、瓶内二次発酵であった場合、にごり酒のように旨味とナッツのようなテイストを楽しむことができます。酵母由来の独特の旨味成分が溶け込んでいることからも、スッキリと滓引きや清澄をされた日本酒とは、ひと味違った味わいを楽しむことができるでしょう。

ただし、ガス充填の発泡性の日本酒の場合、味わいというよりは、飲み心地にこだわって仕上げられているので、味わいは清酒そのものでありながらも、発砲しているという感覚です。

どちらの方が美味しいの?

発泡性の日本酒について、簡単に概要をお伝えしました。ただ、ここまで読み進めていると、瓶内二次発酵の日本酒の方が美味しいだろう、というイメージだと思います。確かに、この瓶内二次発酵で仕上げられた日本酒は、味わいが非常に複雑になります。日本酒を長期にわたって醪と接触させることとなるので、旨味成分が非常に多くなるという可能性はあります。

ただし、ガス充填の日本酒に関しても、スッキリと軽く仕上がるために、乾杯用としては最適です。優劣をつけるのではなく、シーンよって使い方を変化させることをおすすめします。

瓶内二次発酵のメリット

しかしながら、やはり手が込んでいる分、瓶内二次発酵にはメリットも多くあるようです。例えば、蔵元としては高額な装置を購入する必要がないために、価格をある程度は抑えることが可能です。さらに、シャンパーニュ同様に細かく繊細な泡を得ることができるため、複雑かつ繊細な飲み口の日本酒が仕上がります。

もちろん、大きなメリットとしては、消費者に向けて良いイメージを与えやすいということがあります。「時間をかけて、瓶内二次発酵をしている」というセールス文句は、世界中の消費者には刺激的です。

ガス充填のメリット

では、ガス充填にはメリットがさほど無いのでしょうか。ガス充填の最大のメリットは、バリエーションを増やすことができるという点です。純米大吟醸、吟醸、本醸造などの特定名称酒を何でも発砲にできますし、ちょっと変わり種の味わいに仕上げた日本酒や日本酒ベースのリキュールにも使用可能です。

また、失敗の確率が少ないというところもポイントです。瓶内二次発酵は、人間が徹底管理しているとはいえ、自然現象に近い醗酵です。そのため、どうなるのかが分からないのです。やはり、双方にメリットがあるようです。

発泡性日本酒は可能性だらけ?

発泡性の日本酒は、ワインやビールのように浸透しきっている炭酸酒類ではありません。つまり、法律なども厳しく定められておらず、製法の方法には、まだまだ改善の余地があるということになります。

例えば、タンク内二次発酵というシャルマ方式という方法も採用可能です。これは、イタリアのプロセッコなどに使用されているもので、軽く華やかな味わいに仕上がります。これにガス添加をすることも可能です。さらに、さまざまな酒質の日本酒をブレンドして、特有の味わいを造ることも可能です。つまり、発砲性日本酒は未知の分野なのです。

シャンパングラスで乾杯!