酸素とワインの関係

まず、ワインにとって酸素が何故そこまで必要なのか、ということをご説明しましょう。

ワインは生き物、と耳にしたことがあると思いますが、これはワインは絶えず小さいながらも化学変化を起こしており、保存状態によって品質が右往左往するためです。

ワインの品質がこのようにコロコロと変わっていくのには、空気中に含まれてる酸素が重要な役割であり、この酸素があるからこそ、うまく熟成していくといっても過言ではありません。

特に赤ワインにおいては、酸素は非常に重要な役割を果たしています。次に説明しましょう。

樽熟成と酸素

赤ワインの場合、樽熟成を行うものが殆どです。

近年、ステンレスタンクオンリーというものもありますが、3年以上は熟成させたいという赤ワインの場合、樽熟成を採用するのは基本です。

この樽熟成、樽由来のバニラ風味の成分などを抽出して液体に溶解させる、というイメージを持つ方が多いようですが、実は適度に酸素を取り入れるために用いられているのです。

樽は、我々の目視できないほどの小さな孔が空いているため、そこから絶妙な量の酸素が入ってきます。

つまり、樽熟成を行うことで酸素に晒している状態をつくるのです。

適度な酸化がまろやかを生み出す

難しいことは避けますが、赤ワイン(白ワインにも少し含まれる)は、ポリフェノール類が豊富に含まれています。

あの赤ワインの渋みはポリフェノール類の一種である、タンニンが引き起こしています。

酸素に触れることで、このタンニンは酸素と結合、化学反応を起こしていき分子量を大きくしていきます。すると、澱となって沈殿してしまいます。

赤ワインのまろやかさを促進させるためには、このように酸素によるタンニンのまろやか化が重要なのです。

色素の安定化にも貢献

また、このポリフェノール類のなかにはアントシアニンなど、色素に関係する物質も含まれます。

適度な酸化によってアントシアニンの化学反応が進み、結果的に色素が安定化するということに繋がるのです。

ワインが生きている、ということはまさにこのことで、息をするかのごとく、酸素を取り入れていろいろな成分を生み出しているわけです。

長年熟成させたワインをデカンタするシーンを見たことがあるかもしれませんが、あれは要するに速攻で樽熟成のような状態に晒し、味わいと色の安定化を促進させるということなので覚えておきましょう。

ワインの酸化とは?

ここまでは、ワインと酸素の良い関係をお伝えしてきました。次にお伝えするのは、ワインにとって酸素が敵になる、という側面です。

ワインが劣化する理由としては、バクテリアなどが液体内に入り込み、全体を悪しきものに変化させるということと、酸化があります。

前者は、劣化というよりは環境と保管状態が悪かったために、飲んで後にしっかりと栓をして保存しておけばそうそう簡単には起こらない劣化です。

ただし、後者は酸素にワインが触れてしまうことで起こる劣化です。先ほどは、良い影響を与えるといっていたのに、一体どういったことなのでしょうか。

過渡な酸化はワインを不味くする?

例えば、購入したばかりのワインと抜栓してから1週間後のワインを比べると、明らかに前者の方が美味しく、そして瑞々しく感じます。

その理由は、少なからず大量の酸素をワインが取り入れてしまったからです。

前述の通り、ワインは酸素に触れると、ワイン内の成分が酸素によって化学変化を起こします。

特に問題なのが、酸素とアルコールの反応でアセトアルデヒドというアルデヒド類物質が生成されやすくなり、どこかキャラメルが酸っぱくなったような独特の味わいとなります。

芳香成分も失う?

ワインの芳香成分の多くはエステルと言われていますが、このエステルは当然酸素と触れすぎると揮発しますし、別の物質となって良い香りではない、悪しき香りへと変化することがあります。

こうなると、購入してきたワインと1週間後に飲むワインの味わいが違う、という理由もよくわかると思います。

しかし、ワインの面白いところなのですが、別にバクテリアが侵入している訳ではないため、腐ってはいないというところです。

美味しくない、と感じた場合は料理酒として利用することができるので、ぜひ捨てずに大切にしておくと良いでしょう。

白ワインは酸素に敏感

赤ワインの場合、樽熟成を経て造られるため、適度な酸化が必要となります。しかし、問題は白ワインです。

白ワインは、酸化的熟成というよりは、酸素をできるだけ排除した、還元的熟成が行われています。

その理由は、白ワインは含まれているフェノール類が赤ワインに比べて極端に少ないため、酸素から受けるダメージが大きいということなのです。

芳香成分も繊細であり、酸素に触れるだけでかなりの香り成分が無くなるとすらいわれています。そのため、白ワインは大変過保護に醸造されているのです。

褐色が問題

白ワインはフェノール含有量が少ないですが、全くないというわけではありません。

しかし、そのフェノール類の一部が酸素を浴びてしまうと、酒石酸と結合して色合いがどんどん褐色していく、という化学変化を起こしていきます。

樽熟成させたシャルドネやスキンコンタクトを行った一部の白ワインでは、敢えてその色合いを出します。

ですが、透明感があるフレッシュ&フルーティーな白ワインを造る場合、褐色してしまってはその魅力が半減してしまいます。

やはり、このことからも白ワインは酸素とは相性はよろしくない、ということになりそうです。

ワインを酸素から守る方法

酸化というと、あまり表現が良くないようですが、ワインのスタイルによっては大変重要なプロセスとなります。

さらに、酸化について詳しく知っておくことで、ワインを長持ちさせるコツを思いつくはずです。

ワインを購入したら直ぐに飲みきってしまう、という方は少なくはないと思います。しかし、高級ワインを購入したのであれば、ゆっくりとその味を少しずつ長く楽しみたいものです。

ぜひ、今回の酸化の内容を参考にして、美味しいワインを自宅でも楽しんでください。

酸化を理解すればワインが楽しい!

酸化というと、あまり表現が良くないようですが、ワインのスタイルによっては大変重要なプロセスとなります。

さらに、酸化について詳しく知っておくことで、ワインを長持ちさせるコツを思いつくはずです。

ワインを購入したら直ぐに飲みきってしまう、という方は少なくはないと思います。しかし、高級ワインを購入したのであれば、ゆっくりとその味を少しずつ長く楽しみたいものです。

ぜひ、今回の酸化の内容を参考にして、美味しいワインを自宅でも楽しんでください。