日本ワインと国産ワイン

まず、日本ワインの基本的な表示事項に関して解説するまえに、「日本ワイン」と「国産ワイン」についてをおさらいしておきましょう。

日本ワインとは、日本で栽培、収穫されたブドウのみを原料として日本国内で製造された果実酒を指してこう呼ばれています。

一方、国産ワインの場合は、海外輸入の濃縮果汁や輸入ワインなどをブレンドしたものであっても、国内製造であれば国産ワインを名乗ることができる、というものです。

さらに、原料は水とブドウ、または果実…というような規定のため、「キウイワイン」や「パイナップルワイン」、「ゆずワイン」などのラベル表記も違法ではありません。

ラベル表記とは?

新規定では、ラベル表記などが主に改定されます。ワインのラベルとは、ボトルに貼ってある商品名などが記載されたシールですが、あそこの中には記載して良いものと、そうでないものなどが厳しく定められています。

例えば、日本ワインの場合は地域ごとにも特別な条例などがあり、山梨県という表記をラベルにする場合は、山梨産のブドウ100%、そして醸造も山梨県内行わなければなりません。

一方、日本ワインと表記したい場合、国内製造のブドウ80%以上であれば、ブドウ地産や品種、ビンテージ表記も可能です。

厳しいようですが、このような規定を定めないと、偽物などが簡単に出回ってしまう恐れがあるわけです。

フランスのAOCに習う

フランスワインに詳しい方であれば、「AOC(原産地呼称統制制度)」なるものを耳目したことがあるはずです。これは、ワインの出所を示すための法律であり、自分のワインをブランディングするためのツールでもあります。

例えば、ブルゴーニュ地方のジュヴュレ・シャンヴェルタンという有名な村で造られたワインの場合、この名をラベル表記するだけで、数万本以上の売り上げの差が出ます。

ただし、この村で造られたブドウ、そしてこの村で定められた規定を守って醸造されたものだけに、このAOC表記を許さないと、世界中の人々がこの名を使って勝手にワインを売り出してしまうわけです。

そういった偽造防止、ブランド化、品質の向上に役立つのがAOCというものなのです。

実際の表示例

では早速、新規定が制定されたらどのようなラベル表記ができるようになるのか、ここで簡単に説明していきます。まず、ワインの産地名が表記可能です。

地名が示している場所で収穫されたブドウを85%使用し、なおかつ醸造所がある場合に限られます。例えば、山形県のブドウを85%使用すれば、「山形ワイン」と名乗れることになります。

また、醸造地も同時に記名できるため、「山形ワインナカゴミ醸造所」など、そういったラベル表記が法律で守られることになります。

逆に、醸造地を前面に押し出し、山形産を小さく表記することもできるので、生産者によってラベルデザインを変化させ、ブランディングすることが可能です

国産ワインの場合

では、海外の輸入原料を使用した「国産ワイン」の場合、どのような表示が義務づけられるのでしょうか。まず、海外原料や輸入ワインを使用した、ということをラベルにしっかりと表示しなければなりません。

国産原料100%使用など、そういった法の目をかいくぐった表示の仕方はできなくなり、しっかりと輸入ワインということが消費者にわかるようにしなければなりません。

製造所などの記入も必要になってくるので、どこで製造されたのかわからない、というような表示は指導が入ってくることになります。ただし、表に果実酒と記載してあれば、裏面には使用しなくても良いことになっています。

日本ワインを名乗るための義務①


(画像出典:http://yamagatakanko.com/)
日本ワインを名乗るためには、どのようなことが必須条件であるのか、今一度確認しておきましょう。まず大切な、「地名」です。

ワインの産地名をラベル表記する場合、当該地で収穫したブドウを85%以上使用する義務があります。さらに、当該地で醸造されている必要があるため、山形県のブドウを福岡で醸造した場合は産地名を名乗ることはできません。

また、山形県産ブドウと表記したい場合も、当該値で収穫したブドウを85%使用している必要があります。「○○ヴィンヤード葡萄使用」という表記も、それが正しいことが基本となります。

日本ワインを名乗るための義務②

また、フランスなどではあまり見られませんが、使用しているブドウ品種を名乗るためにも、厳しい規定があるので注意です。

「カベルネソーヴィニヨン」など、単一品種を表示する場合は、その品種を85%以上使用していることが基本です。もちろん、前述している当該地で収穫されているブドウであることは言うまでもありません。

さらに、二品種、 三品種の場合は表示するブドウが全体の85%使用されていることが前提です。二品種、 三品種の場合は、使用されている量が多い順から表記する義務があります。

例えば、そのワインで使用されているブドウで最も多いのがシャルドネであった場合、シャルドネを先頭に表示することになります。

特定用語は以前通り使用可能

特定用語は、以前より引き継ぐことができますが、 製造方法などをラベルに表記することが可能となりました。例えば、シャトーやドメーヌなどの表記です。

こちらは、特定用語として見なされているので、ラベルに表記することが可能です。

また、アイスワインやクリオエキストラ クシオン、シュールリー、限定醸造も可能です。エステート、貴腐、無添加なども問題ありません。

これらは、以前より使われていたものであり、大きな化変はありませんが、新しくウッドッチップの使用が認められるなど、改定施行に向けて微調整が進んでいる状態です。常に最新情報をチェックしていきましょう。

デメリットは?

ここまで、日本ワインのラベル表示の新規定についてを紹介しました。自分たちで造ったワインをしっかりとブランディングするため、一役買っているこの新基準。しかし、デメリットもあるといわれています。

例えば、買いブドウが地元では足りず、離れた土地からも購入してアッサンブラージュしていたワイン業者は、その土地の名をラベル表記できなくなります。

「A産ワイン」として愛されていたワインは、もう「A」という名がつけられなくなり、それに気付かない消費者は、「あのワインは、もう生産されていないのか」ということで、売り上げが大幅に減少するかも、という可能性があるのです。

自らが知るしか無い