土壌って何?

さて、ワインと土壌の話をする前に、土壌とは何か?を、考えていきましょう。基本的には、土壌の元となっているのは、砂です。

この砂にも大きさがあり、もっとも小さな単位が粘土とされています。これらに、腐葉土などが混ざり合ったものが、土壌と呼ばれています。

あまり難しく考える必要はないですが、ブドウ畑に限らず、作物が栽培されている畑などにいき、土を踏みしめたことがあると思いますが、あの土を土壌と呼んでいると思ってよいでしょう。

もちろん、表層の下の下層の土壌性質によっても、いろいろと変わってきますが、それは追々お話していきましょう。

ワインにとって優れた土壌とは?

一般的に、作物を育てる場合は肥沃で元気に作物が育つような土壌が選ばれます。より大きく、より美味しく、より量が収穫できれば農家の収入も安定しますし、安心して市場へと送り届けることができます。

しかし、ワイン用ブドウに関しては、全く別の話です。ワイン用ブドウにとって、優れている土壌条件は、「痩せた土地」です。

つまり、他の作物がとてもではないけれども、育たない…。そんな土壌であることが大切なのです。

これは、どうしたことなのでしょうか。ブドウは、元気に育たない方が良いのでしょうか。

栄養素がさほど必要ではない?

さて、痩せている土地でも育つ、ということに関してはもうひとつ注目すべきことがあります。

ブドウは、土中の無機物(ミネラルなど)を吸収したり、窒素分などを蓄えます。しかし、不思議なことにさほどこれらの栄養素は必要なく、ブドウが取り入れるのは、ごく僅かであることがわかっています。

本来、栄養をたっぷりと必要とするような植物が多いなか、ブドウはさほど栄養を極端に必要としないのです。さらに、逆に栄養過多、窒素過多となると出来の悪いブドウが生まれます。

普段、何気なく飲んでいるワインに使われているブドウには、こんな秘密があったのです。

水はけの良さがポイント

ここまで、ワイン用ブドウの場合は痩せた土地が有効である、という話をお伝えしてきました。

そうなると貧相な土壌であれば、どこでも良いのか、という話になります。しかし、これまた難しいことにブドウはどこでも良いわけもありません。

光合成、傾斜、日照時間、雨量、風の通り方など、ブドウ栽培にはさまざま注目すべきトピックがあるのですが、最も大切な要因として、「水はけの良さ」が関係しているようです。

ブドウにとって、水はけの良さが大切、ということはどういったことなのでしょうか。

水分量が大切な理由

ブドウにもっともストレスを与えるのが、水分不足です。

水分が少なければ少ないほど、ブドウは栄養を外に出さないように呼吸を止め、栄養をしっかりと実に蓄えようとします。そして、実は小さくなり、ぐっと糖度も上がっていきます。(日照量、温度が関係するが)仮に、雨が多いとか、毎日のように水をあげていると根腐れを起こしてしまい、良いブドウは育ちません。

とはいえ、まったく水分が無くなってしまった場合は、ストレスに耐えきれず枯れてしまい、成長がストップしてしまいます。

この水分量調節こそが、ワイン用ブドウの品質を大きく左右する、ポイントのひとつになっているわけです。

水はけが良いということは?

では、ワイン用ブドウのために、土壌は水はけが良いとはどういったことなのでしょうか。

まず、水が土中に染み込んでいった時、適度に水分が保持されることが大切です。しかし、その水がは停滞せずにしっかりと下層へと流れていってしまう、ということが大切となります。

全て、水分が流れていってしまうと枯れてしまいますし、停滞しても根腐れを起こします。

理想的な土壌の水はけですが、ブドウが最低限必要な水分が根に入り、そして不要な水分はそのまま下層へとながれていってしまう…。このような、独特の土壌が大変有効ということになるのです。

有名な土壌を紹介

では、ここからはワイン用ブドウに適している、といわれている有名な土壌をいくつか紹介しましょう。

まずは、「粘土質土壌」です。前述したように、粘土はもっとも小さな粒子ですが、これらが集まってできた土壌となります。

特に有名な産地は、ボルドーの右岸であり、シャトー・ペトリュスなどの大変高名なシャトーもこの粘土質土壌です。

夜間、土中の温度が下がり、さらに保水性も高いためにまろやかで、重厚感のある味わいのブドウが栽培しやすいといわれています。

主に、メルロー種やカベルネ・フランなどの、ミディアムボディを生み出すブドウ品種が向いているようです。

石灰質土壌

ミネラリティを感じる土壌、といわれているのが石灰質土壌です。

炭酸カルシウムが含まれた土壌であり、大変水はけが良いと言われていますが、保水性もあるために高品質なブドウを作ることができます。

ピノノワール、シャルドネなど、世界的に高級品種と呼ばれている品種に適しており、高級ワイン産地で有名なブルゴーニュなどは、この石灰質土壌です。

ただし、粘土質の石灰質土壌も存在しており、双方の良いところがバランスよく混ざっている土壌であれば、より優れたワインが生まれると言われています。

変成岩

変成岩とは、その名の通り、海底堆積物などが変成してできあがった岩でできたものです。

シストと呼ばれている片岩質、千枚岩、珪岩などがあり、ドイツの土壌が主にこの変成岩となっているようです。

水はけなどは適度にあるようですが、通気性などが良いために品質高い、健全なワイン用ブドウが育ちやすいといわれています。

力強いブドウ、というよりは、繊細でミネラリティを感じさせるような、エレガントなワインを生み出すような土壌として知られています。

その他、スレートと呼ばれる粘板岩、花崗岩などワインに適している土壌は、世界各地に存在しています。

ワインで言われる土壌を知っておこう