何かを考えて飲んでいる?

ワインといえば、ソムリエなどが難しい顔をしてそのワインの香りや味わいを言葉で表現する、というシーンがイメージされます。日本酒や焼酎、ウイスキーでも存在するテイスティングですが、ワインの場合は少し違います。
日本酒などは、優劣をつけるためにテイスティングが行われていますが、ワインの場合はその品種やヴィンテージ、生産国、そして醸造法にいたるまで、そのワイン自体の正体を暴こうと対峙します。つまり、ワインの場合はやや他の酒類に比べて脳を使いながら飲んでいることとなるのです。
脳は楽しんでいる?

とある研究によって明らかとなったのが、ソムリエなどワインに関わる仕事をしている方の場合、ワインを飲んだ時に活性化する脳の部位が違っていた、ということなのです。
fMRIという、行動を起こした時に脳のどの部分が活性化しているかなどがわかる装置があるのですが、とある研究で複数人にブラインド(銘柄などを明かさず)でワインを飲んでもらい、それらを考えて当ててもらう、というものが行われました。
こういった研究はどんどんブラッシュアップして行われていますが、驚きの結果が出たそうなので、ここで簡単に紹介していこうと思います。
ワインを飲んだ時の脳の動き

実は、この実験はどんなワインだったかを当てるというよりは、ワインを飲んだ時に専門家とそうで無い一般人の場合、脳の活動にどのような差があるのかを調べるために行われたものです。
まず、香りや味わい、視覚などの刺激信号は眼窩前頭皮質というところで処理され、各分野の専門的な知覚を行う部位へと送られます。
そのため、ここに関しては両者別に働きも変わることはありません。さらに、報酬系と呼ばれる部位がソムリエの方が先に反応しますが、一般人は後で反応した、ということでここだけは一緒でした。
では、特にこの実験はさほど影響力は無いのか、と思いきや面白いことが起こったのです。
ソムリエは楽しんでいた

実は、この時にソムリエたちは左脳部分のとある場所が活発化されており、一般の方には反応がありませんでした。
その部位は、考えたり、学んだり、ゲームをしたりする時に活性化する場所であり、ソムリエはワインを飲むこと自体をゲームとして捉え、報酬として一般人よりも強く感じていた、ということになります。
普段、ワインと真剣に対峙し続けていたことで、普通の方よりもワインの楽しみ方がワンランク上になってしまっていた、という結果が出たのです。これは、音楽家や画家、スポーツ選手などでも起こる作用だそうですので、やはり専門家は使っている脳が違うのです。
価格に左右されるのか?

ワインを脳で感じる、というテーマの時にどうしても外すことができないのが、価格による味わいの変化です。これは、いろいろな角度から研究、実験が行われているものですが、まずは価格と味わいの変化を考えていきましょう。
とある被験者に行われた実験ですが、全く同じワインをブラインドで数回に渡って飲ませられた実験があります。
その実験の結果ですが、なんと価格を先に伝えていた場合、高額な価格と伝えると「品質の高い素晴らしいワインである」と答える人たちがかなりの数いた、というのです。ブランド品でもそうですが、ワインも同様の現象が起こっているようなのです。
高級ワインを当てられない

また、心理学者であるRichard Wisemanという人物が以前実験した内容では、さまざまな価格のワインを手に入れ、被験者にブランドで振る舞ったといいます。
その時、高級ワインを当てられた人物たちは数少なく、さらにはボルドーに関しては安いワインの方が美味しい、と答えた被験者が多かったそうです。
これらは、脳科学というよりも、ワインという飲み物自体の性質にも関係してくるかもしれません。ワインの場合、安いから不味くて、高いから美味しい、ということではなさそうです。高い=美味しいと思えるワイン、という思い込みから発生した結果といえるでしょう。
安いワインが美味しくなるわけ

道を外しますが、安いワインがなぜ美味しいのか、ということです。まず、ワインの場合は熟成などの期間が長ければ高くなり、需要と供給のバランスでも大きく変わります。さらに、手塩にかけて少量生産すれば高くなりますし、複雑でほかにない個性的な味わいもそれに当たります。
美味しいとか、美味しくないとか、そういった部分はさほど価格に反映されておらず、どれだけ造り手の哲学が詰まっているのか…という、古着の一点もののような状態なのです。
安いワインは、美味しく飲んでもらうために研究し尽くされたできあがったものです。ただし、単調で複雑実に欠けます。複雑で飲みにくい、個性的なワインが高いのです。
クロスモダリティ効果

また、視覚の方が味覚よりも強烈な印象を残す、ということもワインと関係があるようです。クロスモダリティ効果といって、サーモンの味わいがしてもマグロの見た目の場合、マグロだと思って食べてしまう効果なのだそうです。
実際、いろいろな実験の中で、赤ワインか白ワインかわからない状況を作り、赤ワインをじっくりと見せ、「このワインは、ブラックベリーや煮詰めたジャム、そしてマロラティックから来るまろやかな乳酸」と、前情報を入れると、被験者の多くは似たような白ワインの場合であっても、赤ワインをテイスティングしている時と同様の発言をしてしまうのです。
ストーリーが味になる理屈が成立

こういった人間の心理効果、脳の誤作動というようなことが起こる場合、ストーリーでモノを売っていくというマーケティング法は間違いなく効果的といえます。
例えば、全く同じクオリティのワインがあったとしても、片方は科学的に製造マシンに任せ、人の手は加えなかったといい、片方は30年以上ワイン造りを行っているブルゴーニュの玄人が手塩にかけて生み出したワインとして売り出した場合、恐らく後者の方が数倍売れるはずです。
同じワインをブラインドテイスティングしても、同様の効果が起こるはずです。ある種、ワイン業界もこのテクニックを使ってみるべきなのかも、しれませんね。
ワインで脳が活性化

ワインには、脳を活性化させたり、誤作動的な反応を起こさせる装置があるわけではありません。ただ、人にとっての研究対象になりやすく、楽しんで飲めるお酒である、ということなのです。
つまり、今回お伝えした内容だけではなく、冷静に考えるとどんなお酒であっても同様の状態を得ることは可能、ということになります。
日本酒だったり、ビールもそうですが、「この麹は何だろう…」とか「ホップが効いているけれど、醸造法は?」とか、「香りがどうすればたつのか…」など、細々と考えながら飲むと活性化するかもしれません。ぜひ、さまざまな楽してみてくださいね。
ワイン以外でも活性化するのでは?

ワインには、脳を活性化させたり、誤作動的な反応を起こさせる装置があるわけではありません。ただ、人にとっての研究対象になりやすく、楽しんで飲めるお酒である、ということなのです。
つまり、今回お伝えした内容だけではなく、冷静に考えるとどんなお酒であっても同様の状態を得ることは可能、ということになります。
日本酒だったり、ビールもそうですが、「この麹は何だろう…」とか「ホップが効いているけれど、醸造法は?」とか、「香りがどうすればたつのか…」など、細々と考えながら飲むと活性化するかもしれません。ぜひ、さまざまな楽してみてくださいね。

古物商許可証取得。酒類販売責任者。
株式会社ストックラボの鑑定責任者、真贋査定士、及び出張買取責任者。 複数の買取会社でウイスキー・ワイン・日本酒・焼酎・ブランデーなどの幅広いお酒の買取鑑定・査定を行ってきた鑑定士歴7年のエグゼクティブバイヤー。






