フランスのワインには格付が付けられている。それらはAOC法と呼ばれているワイン法でまとめられているのだが、美味しいから特級で美味しくないから低級というわけではない。ここでは、フランスワインにおける「AOC法」についてを解説していく。

AOC法って一体何?

原産地統制呼称を意味する

AOC法とは、「原産地統制呼称」や「原産地呼称統制」のこと。「アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(Appellation d’Origine Contrôlée)」の頭文字が略されて、「AOC」と呼ばれている。

AOC法は、格付けをするための法律ではなく、ひとまずは「その産地で生産されたワイン」という証明証のような役割を持つ法律であり、その製品の安心を保証するものと覚えておくと良いだろう。

ワイン以外にも適用されている

AOC法について、ワインファンでも案外知らない情報が、ワイン以外にも適用されている、ということだ。

フランスにはワイン以外にも数多くの有名農産物が存在していることから、これら原産地の呼称を守るためにAOC法が作られている。

例えば、チーズやバターなどはそれにあたり、フランスの農業製品のいくつかはこのAOC法で守られている。品質保証はもちろん、フランス農産物の「ブランディング」にも一役買っている。

偽物を排除するための法律だった

AOC法はブランディングにもなる、ということをお伝えしたが、この法律ができる裏側には粗悪なワインが市場に出回っていたという背景もある。

ワインにおけるAOC法は大変規定が厳しく、栽培・醸造場所はもちろん、ブドウ品種、醸造方法、収量、糖度、酸度など細かく規定されている。

AOC法が徹底していない場合、例えばどこで造られようが「ロマネコンティ」と表記できてしまうため、こういった厳しいワイン法ができたのだ。

格付けの基準になっている?

ワインショップ

AOC法は生産地の範囲を示す

産地によってAOC法のシステムは若干異なるが、大まかに言って生産範囲が狭くなればなるほど、高級品となる。

後述するが、AOCが明確に格付となっているのは、ブルゴーニュ地方でその他の地域は格付というよりは、「ワインが造られている範囲」。

東京都で例えると、AOC東京が広範囲のAOCとなり、AOC23区、AOC港区、AOC麻布一丁目と、その生産地が狭くなるほどに、生産量が少なくなるため高級品とされるのだ。

ブルゴーニュ地方のAOC

ブルゴーニュのAOCは、非常に独特だ。例えば、白ワインで有名なシャブリの場合、AOCに「シャブリ」「シャブリ・プルミエ・クリュ」「シャブリ・グラン・クリュ」と、明らかに格付されている。

なぜ、こんなに細かな格付が可能なのかというと、ブルゴーニュは「畑を重要視している」からだ。

1級畑、特級畑の称号が、各原産地のAOCにプラスされ表記されるため、AOC=格付といった印象になるのだろう。

ボルドー地方のAOC法も特殊

ボルドーと言えば、61の格付シャトーだ。しかし、ブルゴーニュ地方と違い、AOC表記内に「第二級」などとは挟めず、ラベルのどこかに表記できるカタチとなっている。

ボルドーの格付シャトーは、あくまで村名AOCが最高位であり、畑やシャトー単位でAOC法が区分されていない。

ボルドーに関しては残念だが、ラベルをパッと見ただけでは何級なのかがわからないものもあるため、覚えるしかない、という現実がある。

AOCからAOPへ

さまざまなワイン

AOCは1935年に制定されたワイン法

AOCは、今も尚市場では使用されているが、近年ではAOPというものに移行しつつある。AOPについては後述するが、まずAOC自体は1935年に制定された古いものだったのだ。

実は、2008年以前は、AOCが最高区分で、以下「AOVDQS」「Vin de Pays」「Vin de table」という階級が存在していた。

そして、2009年にEU理事会規則が新しい品質分類としてAOPを適用したのだ。

AOPになった後の区分分け

2009年、EU理事会規則によって適用されているのがAOP。区分としては、「AOP」が最高位カテゴリとなり、「IGP」が中間、「Vin de table」がテーブルワインとなった。

AOPは、「アペラシオン・ドリジーヌ・プロテジェ」の略称となっており、AOCの時と同様に「原産地呼称保護」という意味合いで使われている。

混乱を招くかもしれないが、AOCもAOPも同様の意味合いである。

AOPの定義を知っておく

AOPは、AOCとほぼ同様だ、とお伝えしたが、一応新しく制定されたものなので、その定義だけを知っておくことは損にはならないだろう。

ワインラベルに「AOP」を表記したい場合、「品質と特徴が特殊な地理的環境に起因していること」、「原料はヴィティス・ヴィニフィラ種100%を使用すること」などが、定義されている。

生産者は非常に大変であるが、これらが表記されていれば「信頼感のあるワイン」と思って間違いない。

ワイン選びに活かせる!?

並べたワイン

産地で選ぶことができるので便利

ワイン初心者の方の場合、フランスワインの選び方の難しさに落胆してしまっているかもしれない。しかし、前述してきたAOC法について知れば、簡単にワインを選ぶことが可能だ。

AOC法は原産地を保護するワイン法であるため、その産地の名が必ず記載されている。つまり、ボルドーワインを飲みたい場合、そのラベルには「ボルドー及びボルドー地方の地区名、村名」が必ず記載される。

AOC法は、実は大変有り難い手引きなのだ。

大まかな地方名をまずは知るだけでいい

AOCのラベル表記を見れば、大抵はわかるとは言ったが、土地の名前を覚えなければ一切意味がない。そのため、残念なのだが、フランスの地名を覚える努力だけは避けることができない。

とはいえ、フランスは有名な地方名ばかりなので、まずは大まかな地方名だけを覚えるだけでも良いだろう。「ボルドー」「ブルゴーニュ」「シャンパーニュ」「ロワール」と、いった具合だ。そこから、お気に入りの地方を見付け、深堀すれば良い。

好みの味を見つけやすい

最後にひとつとっておきの情報を。前述したが、AOC法の優れているところは、その産地で使用されている「ブドウ品種」までが決まっていることだ。

例えば、ブルゴーニュ地方の高級ワイン産地「AOCコート・ド・ボーヌ」は、赤ワインにピノ・ノワール以外を使用することは禁止されている。一方、ボルドーは、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどになる。

AOC法さえわかれば、ラベルを見ただけで味わいが想像できるのだ。

まとめ

ワインの法律というと小難しく面倒になりそうだが、「AOC法」を知るだけでフランスワインの選び方が楽になる。覚えておいて損は無いので、ぜひ少々辛抱してAOC法を身につけておこう。